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『星落ちて、なお』澤田瞳子 ‐ ひとりの女性の一代記【書評】

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この記事では、澤田瞳子さんの小説『星落ちて、なお』について、そのテーマや登場人物、物語の魅力をさまざまな角度から掘り下げていきます。

星落ちて、なお 澤田瞳子・著

星落ちて、なお(澤田瞳子/文藝春秋)の表紙
出典:Amazon

書誌情報

書名:星落ちて、なお
著者:澤田瞳子
出版社:文藝春秋
発売年月:単行本 2021年5月/文庫本 2024年4月/電子書籍 2024年4月
ページ数:単行本 328ページ/文庫本 368ページ
ジャンル:歴史・時代小説

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ひとりの女性の一代記

澤田瞳子さんの『星落ちて、なお』(文藝春秋, 2021年5月15日)は、明治から昭和初期に実在した女絵師がモデルの時代小説である。本作は第165回直木賞(2021年上半期)を受賞した。

本作の初出は、「別冊文藝春秋」。2019年7月号から2021年1月号にかけて掲載された連載小説である。

「別冊文藝春秋」は、隔月刊行の電子小説誌で、表紙の刊行月は奇数月、発売日はその前月の20日ごろ。娯楽小説を扱い、連載小説の発表の場となっている。単行本化され、直木賞を受賞する作品も多い。

文藝春秋発行の小説誌には、紙媒体の月刊誌、「文學界」と「オール讀物」がある。「文學界」が純文学を扱い、「オール讀物」が大衆小説を扱う。「オール讀物」は、読み切り中心の娯楽小説誌である。

澤田瞳子さんの『星落ちて、なお』は、時代小説である。明治から大正の、東京を舞台に、実在した女絵師をモデルにし、彼女の人生を一代記として書いている。

主人公は、女絵師・河鍋とよ。画号は暁翠。彼女の父・河鍋暁斎は、名の知れた絵師。暁斎は、師匠に「画鬼」と仇名を付けられた、不世出の絵師。とよは父・暁斎から幼少より絵の手ほどきを受けてきた。河鍋暁斎および暁翠らの登場人物は、実在した日本画家。

本作は6章から成る。章のタイトルは次のとおりである。

蛙鳴く 明治22年、春
かざみ草 明治29年、冬
老龍 明治39年、初夏
砧 大正2年、春
赤い月 大正12年、初秋
画鬼の家 大正13年、冬

本作は、幼少期や晩年を除く、ひとりの女性の一代記である。連載小説であるが、次の章になると、長い年月が経過しているという構成。

「かざみ草」は、梅の異名。漢字にすると、香散見草と書く。風見草とも書くが、この場合、梅だけでなく、柳やヒヤシンスの異名でもある。
「砧」(きぬた)は、世阿弥作曲と伝えられる能楽作品のこと。
「赤い月」というタイトルの章は、大正12年初秋の出来事。つまり関東大震災を題材として取り上げている。

本作の冒頭は、暁斎の通夜を執り行った次の日の夜。河鍋暁斎は交誼が広く、弟子の数だけでも二百人を超す。その中にも、本作における主要な登場人物がいる。そして父亡き後の兄弟姉妹の関係も重要なテーマのひとつと言えよう。
鬼才・河鍋暁斎の娘・暁翠は、父亡き後、絵師として、娘として、父の影に翻弄されつつも、激動の時代を生き抜く。

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