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『才能に頼らない文章術』上野郁江 ‐ 編集者の視点を持つと文章力は向上する【書評】

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この記事では、上野郁江氏の著書『才能に頼らない文章術』をご紹介します。

才能に頼らない文章術 上野郁江・著

才能に頼らない文章術(ディスカヴァー・トゥエンティワン/上野郁江)
出典:Amazon

書誌情報

書名:才能に頼らない文章術 「編集の文法チェックシート」でマスター
著者:上野郁江
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売年月:単行本 2018年11月/電子書籍 2018年11月
ページ数:単行本 232ページ
Cコード:C0034(経営)

編集者の視点を持つと文章力は向上する

上野郁江氏の著書『才能に頼らない文章術』を読んだ。上野郁江氏は、出版社で編集者としてビジネス書を担当し、独立した方。

作家やライターが書いた文章術の書籍を、これまで何冊か読んだ。この本は、出版社の元編集者の考えを学ぶことができるので、勉強になる。

世の中は、Webによる情報発信が当たり前になり、個人で情報発信する機会が増えている。今後は、そのような機会がますます増えそうだ。
上野郁江氏は、短期間で文章力をアップさせるための方法論を『才能に頼らない文章術』という本にまとめてくれた。自己流でどうにか書いてきた方は、文章力の向上に役立つだろう。

短期間で文章力をアップさせるには、編集者の視点が必要になる。
文章力は才能と言われることもあるが、編集力は才能ではない。ポイントを押さえれば、伸ばしていくことができる。編集力は誰もが身に付けられるスキルなのだ。

なぜ、文章力の向上に編集者の視点が必要なのか。
何かの文章を読んでいて、次のようなことを感じたことはあるだろうか。

「タイトルに引かれたが、読んでがっかり」
「何が言いたいのか分からない」
「根拠があいまいで納得いかない」

このような記事が増えている理由は、編集者の視点を持たずに記事を書いているから。Web上にコンテンツが大量に増え、編集者の力が必要になっている。

上野郁江氏は、本書のなかで次のように述べている。

相手の価値観にそって文章を組み立てていくことで、共感や信頼を得られる文章が書けるようになります。

編集者の視点を持つということは、読者の視点を持つこと。
それには、相手の立場に立った言葉を使って、物事を説明する必要がある。

本づくりには、企画、取材、執筆、編集、校了、販売という6つのフェーズがある。
取材と執筆に強みがあり、それを業務範囲としているのがライター。

上野郁江氏は、編集者を6つのフェーズをすべてカバーする人と定義している。
6つのフェーズの1つになっている編集は、狭義の編集のことで、原稿整理などの業務を指している。
6つのフェーズをカバーできる編集者は、文章の目的を考えている。
「誰に、何の目的で、何を伝えるか」を明確にすれば、書く材料が見つかり筆も進む。目的を明確に意識すれば、文章が書けないといった悩みは減るかもしれない。

上野郁江氏は、編集執筆力に必要な4つのスキルとして、「文章基礎力、文章表現力、文章構成力、メディアマインド」を挙げている。
この4つは、見えるか見えないかの横軸と、論理的・ロジカルなのか心理的・エモーショナルなのかの縦軸によるマトリクス図にして説明されている。
見えるのが「文章基礎力」と「文章表現力」、見えないのが「文章構成力」と「メディアマインド」。
論理的・ロジカルなのが「文章基礎力」と「文章構成力」、心理的・エモーショナルなのが「文章表現力」と「メディアマインド」。

上野郁江氏は、書き手に求められるメディアマインドについて次のように定義している。

情報を発信するメディア人としてもつべき心のあり方

読者の共感と信頼を得たいなら、論理と感性を掛け合わせた文章にする。
論理的な文章は信頼感が高まるが、無機質になりがち。
エモーショナルを追求した感性的な文章は、読み解くのに芸術的な感性が必要になるが、共感を得やすい。自由な発想で書かれた、エッセイや詩などはその極みと言える。

メディアの役割は、正しい文章を書き、誰かに物事を伝えることである。言うまでもないが、文章を書く上では、正しく伝えることがとても重要。

上野郁江氏は、以下の4つの要素を満たすものを「正しい文章」と定義した。

  • Sincerity(シンシアリティ) … 誠実、正直、偽りのないこと
  • Accuracy(アキュラシー) … 正確さ、間違いのないこと
  • Credibility(クレディビリティ) … 信頼できる文章で書かれていること
  • Readability(リーダビリティ) … 読みやすい文章で書かれていること

嘘をつかないことは人としても重要な大前提である。
正確さを求めるには、丁寧さや地道な作業が必要になる。
文章を読んだときに要素と構成から外れていると、違和感があり信頼度は下がる。
そして読みやすい文章には、「てにをは」をはじめとする国語文法の知識、論理構成、読者の視点と思考の流れを考えることの3つが必要だ。

メディアマインドは、4つの要素のうち、「Sincerity(誠実さ)」と「Accuracy(正確さ)」と深い関係のある編集執筆力である。
文章基礎力と文章表現力と文章構成力の3つは、「Credibility(信頼性)」と「Readability(可読性)」の達成に必要な編集執筆力だ。
詳しくは、上野郁江氏の著書『才能に頼らない文章術』を読んで学んでほしい。

上野郁江氏は、編集執筆力の具体的なノウハウについて、用例を挙げて解説しているので、分かりやすく参考になることが多い。

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