この記事では、石黒圭氏の著書『「接続詞」の技術:書きたいことがすらすら書ける!』を紹介します。
「接続詞」の技術 石黒圭・著
書誌情報
書名:「接続詞」の技術 ―― 書きたいことがすらすら書ける!
著者:石黒圭
出版社:実務教育出版
発売年月:単行本 2016年7月
ページ数:単行本 206ページ
Cコード:C0030(社会科学総記)
分かりやすくて良質な多くの例文を使って解説
石黒圭氏の著書『「接続詞」の技術:書きたいことがすらすら書ける!』は、2016年7月に実務教育出版から刊行された。本書刊行のきっかけになった石黒氏のロングセラー著書『文章は接続詞で決まる』(光文社新書, 2008年)が理論的であったのに対して、本書『「接続詞」の技術』はその実践編。
理論書と実践書を合わせて読むことで、石黒圭氏の見解も含めて接続詞についての理解が深まることであろう。接続詞に焦点を絞った本は少ないが、この二冊には多くのことが網羅されている。理論書は苦手という方は、実践編として書かれた『「接続詞」の技術』だけを読んでもよいかもしれない。各章では、回答形式の問題文を含めて、分かりやすくて良質な多くの例文を使って解説している。多くの方にとって理解しやすい内容と言えそうだ。
本書では、接続詞を大分類し「論理の接続詞」「整理の接続詞」「理解の接続詞」「展開の接続詞」の4つに分けた。これらは、本書の第2章から第5章にあたる。第1章は「接続詞の基本」で、第6章から第8章は応用編。第6章は「接続詞と文脈」、第7章は「接続詞の実践」、第8章は「接続詞の留意点」と章分けされている。
接続詞は、文頭で前後の論理関係を表す品詞であるが、バリエーションが多く、話し言葉特有のもの、方言、古語まで含めていくと、相当数になる。話し言葉だけでなく書き言葉でも使われ、方言を含まない現代語で使われていると限定すると、接続詞の数はおよそ340になるそうだ。本書では、この約340の接続詞を、4つに大分類している。さらに中分類し4類10種に分け、接続詞を考えている。またこれを、さらに小分類し36に分けた。
たとえば、大分類「論理の接続詞」のなかに中分類「順接」と「逆接」があり、中分類「順接」のなかに「帰結- 主観」「帰結 – 必然」「帰結 – 原因」「帰結 – 評価」「帰結 – 慎重」「対応」「推移」「仮定 – 推論」「仮定 – 指示」と、9つの小分類がある。
本書の巻末には、これらすべてをまとめた表が付いている。表を見ると「大分類」「中分類」「小分類」「見出し語」「用法」「バリエーション」まで一目でわかるので便利だ。目次には、「大分類」「中分類」「小分類」「見出し語」が書かれている。
接続詞について何かを調べたいとき、どこを読むとよいのかがすぐに分かるので、文章を書いているときにも役立ちそうだ。巻末の表も参考にしながら調べると良いだろう。巻末の表を見ると、小分類「仮定 – 推論」のバリエーションが非常に多いことが分かった。見出し語の「ならば」「そうなると」「だとすると」を除くと、バリエーションは36種類であった。
また、第2章から第5章までは、章の冒頭で中分類の解説をして、その後は小分類した接続詞について一つひとつ丁寧に解説されている。たとえば、中分類「逆接」のなかの小分類は、「齟齬」「抵抗」「制限」の3つ。それらを代表する接続詞は、それぞれ「しかし」「にもかかわらず」「ただ」だが、3つの接続詞のニュアンスの違いを説明できるだろうか。本書は、さらに齟齬の接続詞のバリエーションごとの違いにも触れるという内容だ。
そして、第6章以降は応用編だが、前後の文脈との調和、接続詞を駆使する実践、使い方の注意点が書かれているので、これらも大いに勉強になるはずだ。