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『白夜行』東野圭吾 小説では雪穂と亮司の繋がりは謎だらけ【書評】

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この記事では、東野圭吾さんの小説『白夜行』について、そのテーマや登場人物、物語の魅力をさまざまな角度から掘り下げていきます。

白夜行 東野圭吾・著

白夜行(東野圭吾, 集英社文庫)の表紙

書誌情報

著者:東野圭吾
出版社:集英社
発売年月:単行本 1999年8月/文庫本 2002年5月/電子書籍 2020年4月
ページ数:864ページ(文庫版)

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小説では雪穂と亮司の繋がりは謎だらけ

小説『白夜行』は、東野圭吾さんの代表作のひとつと言える長編ミステリー。
叙事詩的と評されることも多い。

連載小説として、集英社「小説すばる」の1997年1月号から1999年1月号に掲載された後、1999年8月に単行本として刊行された。
「小説すばる」には連作短編として掲載されていたため、長編小説として単行本化する際は構成し直している。
精緻な構成の評価は高い。

『白夜行』は、何が起こるのか、どのような展開になるのかを知りたくて、読み続けたくなるようなミステリー小説だ。
幾重にも張り巡らされる伏線や、緻密なストーリー展開などには、やはり魅力を感じる。

物語の主人公は、貧しい母子家庭で育った西本雪穂と、質屋の息子である桐原亮司。
二人が小学5年生であった1973年の夏、建設途中で放置されていた大阪のビルで殺人事件が起きた。
殺されたのは、桐原亮司の父親、桐原洋介。
西本雪穂の母親である西本文代は、桐原洋介の経営する質屋「きりはら」の客であり、桐原洋介は西本親子の住むアパートに出入りしていた。
そのため大阪府警捜査一課は、西本文代を被疑者の一人として、捜査対象にする。
捜査を担当した刑事の一人に笹垣潤三という人物がいた。
笹垣潤三は、事件が迷宮入りし、警察官を退職した後も、19年間、真相を追い続ける。

西本文代にはアリバイがあったが、西本家のアパートに出入りしていた、寺崎忠夫という男の存在を知った大阪府警捜査一課は共犯を疑う。
寺崎忠夫は、化粧品や美容器具などを小売店に卸したり、一般客から直接注文を受けたりして、生計を立てていた。
「アゲハ商事」という社名を掲げているが、他に従業員はいない。
寺崎忠夫は、取引先からの評判はよいが、自転車操業となっており、ぎりぎりの商売をしていた。

寺崎忠夫は、西本文代が働く、うどん屋「菊や」にも、昼食を食べに頻繁に来ている。
笹垣潤三ほか大阪府警捜査一課の刑事は、「菊や」に張り込み、寺崎忠夫に声をかけた。
寺崎忠夫は、西本文代のことを客の一人と言ったが、西本文代の自宅アパートの近所での目撃情報は多い。

この段階で刑事たちは、西本文代と寺崎忠夫が男女の関係にあると考えていた。
質屋「きりはら」の帳簿から、西本文代が借りたお金を返せていないことも把握している。
刑事たちは、桐原洋介が金を貸している西本文代に言い寄っていた可能性がある、と考えていた。
刑事たちは、殺害される直前の桐原洋介が、銀行で100万円を下ろしていたことも、突き止める。

刑事たちは、恋人に言い寄る桐原洋介に殺意を抱いていた寺崎忠夫が、桐原洋介が所持していた100万円に目がくらみ殺害したのでは、と疑っていた。

捜査を進めている矢先、寺崎忠夫は交通事故で死亡する。
刑事たちは、西本文代を警察に呼び、白状させようとするが、西本文代は否認し続ける。

そんな状況のなか、今度は西本文代が自宅アパートで、ガス中毒で死亡する。
西本文代の死は、娘の西本雪穂の証言などから、事故死として処理された。
ただし、西本文代の置かれている状況から自殺の噂も広まる。

そして、質屋殺しの事件は、迷宮入りした。
『白夜行』は、第13章まである長編小説だが、ここまでが第1章。
その後、主人公の雪穂と亮司は、それぞれが多くの登場人物を事件に巻き込みながら、人生を歩む。

母親が亡くなった西本雪穂は、親類である唐沢礼子の養女となり、唐沢雪穂となった。
貧しい家庭で育った雪穂であったが、唐沢家の養女となったことで、人生が一変する。
唐沢礼子は、茶道の先生であり、華道や琴も教えることができた。
唐沢雪穂は、唐沢礼子から礼儀作法を教わり、学業にも勤しむ。
もともとの美貌に加え、女性としての礼儀作法や教養を身に付け、世間からも注目されるような女性となる。
こうして唐沢雪穂は、他人が憧れる華やかな人生を歩み始める。

桐原亮司は、裏稼業に手を出すなど雪穂とは対照的な人生を送る。
高校時代に同級生を誘って主婦相手の売春斡旋をしたり、ゲームソフトの偽造をしたりするなどしていた。
桐原亮司は、ほぼ独学でコンピューターの勉強をして貪欲に知識を深めていく。
桐原亮司のコンピューター技術は、プロの域に達した。
パソコンショップを開いたり、ソフトウェア会社に就職したりもしていたが、裏稼業を続けた。

事件当時、小学5年生であった二人の主人公は、その後まったく別の人生を歩んでいるようにみえるが、実は繋がりを持ち続けていた。

二人の周りでは、次々と不可解な事件が起こる。
小説を読み進めていくと、それらの事件に二人が関わっていることを、想像できる。

二人の人生と周囲で起こる不可解な事件が、様々な人物の視点で語られ、一旦迷宮入りした1973年の質屋殺し事件の真相が明らかになってゆく。

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