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『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』丸山俊一/NHK「欲望の時代の哲学」制作班【書評】

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『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』は、2018年12月にNHK出版新書から刊行されました。本書は、2018年6月にマルクス・ガブリエル氏が来日した際の滞日記録をまとめた、NHK番組「欲望の時代の哲学」を書籍化したものです。著者は、NHKプロデューサーの丸山俊一氏および NHK「欲望の時代の哲学」制作班。

本書は「章」「節」「項」と章立てされていて、項目の数が多いため、どこに何が書かれているのか一目で分かるようになっています。こでは章の見出しのみ紹介します。

目次
序章 哲学が生きるためのツールになる時(丸山俊一)
Ⅰ章 静寂が叫ぶ国・ニッポンを哲学する
Ⅱ章 哲学は時代との格闘だ
Ⅲ章 技術を獲得した果てに人間はどこへ?
終章 「欲望の時代」の柔らかな戦い方(丸山俊一)

序章と終章は丸山俊一氏が執筆されました。Ⅰ章からⅢ章までは、マルクス・ガブリエル氏が日本滞在時に訪れた場所での発言、スタジオで語ったこと、科学者との対話という順番で収録されています。その際に丸山俊一氏が再構成したとのこと。

Ⅰ章はマルクス・ガブリエル氏をNHKのスタッフが空港で出迎える場面から始まります。そして、マルクス・ガブリエル氏を東京・大阪・京都に案内します。そこでのマルクス・ガブリエル氏の発言が、Ⅰ章の中心的な内容です。Ⅰ章はマルクス・ガブリエル氏が、東京・大阪・京都を訪れた際に発した言葉を再構成したものであり、ディレクターや通訳たちや、道行く人々との会話からも抜粋されています。マルクス・ガブリエル氏が、日本の、日本人の今をどう見たかに注目し、心に刺さった言葉を記録したようです。

Ⅱ章の内容は、NHKのスタジオでマルクス・ガブリエル氏が語ったこと。ヨーロッパの現代史と哲学の流れを講座番組のように解説してもらい、書き記したものがⅡ章です。第二次世界大戦という凄惨な歴史、戦後に新たにスタートした哲学。負の歴史への自己反省から実存主義が生まれ、構造主義が生まれ、ポスト構造主義へという流れが生まれました。このように哲学が社会との格闘の中で磨かれ、紡ぎ出された思考の装置であることが語られています。そして、本書のキーワードのひとつ、マルクス・ガブリエル氏が提唱する「新実在論」について。

Ⅲ章は哲学者・マルクス・ガブリエル氏と科学者・石黒浩氏の対話です。石黒浩氏は世界的なロボット工学の権威です。

本書のポイントのひとつは、自然主義の否定ですが、これは単に人文主義の復権ではなく、あらゆる認識の方法論に対してフラットであり続けようとする精神の運動です。たとえば、20世紀に米ソという二大超大国が共に同じ過ちを犯したことは、自然主義や科学万能主義が招いたこと。たとえば、核兵器の開発競争。資本主義と社会主義の対局とされてきましたが、科学万能主義という点では同じもの。

マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する/丸山 俊一
書誌情報

書名:マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する
著者:丸山俊一/NHK「欲望の時代の哲学」制作班
出版社:NHK出版新書
発行年月:2018年12月11日
Cコード:C0210(哲学)

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