小説

『おもろい以外いらんねん』大前粟生 ‐ 笑いと差別をテーマにした中編小説【書評】

この記事は約2分で読めます。

この記事では、大前粟生さんの小説『おもろい以外いらんねん』について、そのテーマや登場人物、物語の魅力をさまざまな角度から掘り下げていきます。

おもろい以外いらんねん 大前粟生・著

おもろい以外いらんねん(河出書房新社/大前粟生)
出典:Amazon

書誌情報

書名:おもろい以外いらんねん
著者:大前粟生
出版社:河出書房新社
発売年月:単行本 2021年1月/電子書籍 2021年1月
ページ数:単行本 176ページ

笑いと差別をテーマにした中編小説

大前粟生さんの中編小説『おもろい以外いらんねん』は、笑いと差別をテーマにと依頼され、書き上げた作品とのこと。単行本で176ページの分量。

2020年のコロナ下、リアルタイムで現実でも起きているようなことをフィクションに、と言われたそうだ。男性性を反省する言葉などは、本作のテーマを踏まえているのであろう。
2020年のコロナ下、リアルタイムのお笑い芸人にスポットをあてた話であった。

前半は十年前の高校時代。幼馴染の町岡咲太と滝場トモヒロ、転校生のユウキらが登場する。滝場とユウキが、お笑いコンビを結成する経緯などが前半で描かれている。作者の大前粟生さんの話によると、回想シーンが膨らんできて、前半にもってきたらしい。

後半は彼らの十年後。滝場とユウキは、お笑いコンビ<馬場リッチバルコニー>としての活動を続けてきた。しかしコロナ禍のため、現実の世界の芸人さんたちと同じような境遇の中での活動を強いられている。咲太はホテルで働いているが状況は厳しい。咲太と滝場の姉・彩花は、お笑い芸人となった二人を、それぞれの立場から見守る。

本作は、お笑い芸人にスポットをあてながら、コロナ下の現代日本について書いた作品。お笑いの話が多いので、お笑い好きの人はとくに楽しめそうだ。会話は関西芸人のノリ。芸人同士のやり取りには、ついていけないところもあったが、読み進めていくと、味わいが出てくる。大前粟生さんは、多くの人がテレビで見聞きしていることを題材に、依頼されたテーマに則り、中編小説として書き上げたのだ。笑いについて、真剣に深く考えてみたくなる作品である。

タイトルとURLをコピーしました