映画・ドラマ

『敦煌』壮大なスケールの歴史ロマン【映画評】

この記事は約3分で読めます。

ここでは、映画『敦煌』について取り上げます。本作は1988年に製作された井上靖原作の歴史大作。監督を佐藤純彌さん、主演を西田敏行さんが務められました。

敦煌

敦煌
出典:Amazon

作品情報

監督:佐藤純彌
脚本:吉田剛、佐藤純彌
原作:井上靖『敦煌
出演者:西田敏行、佐藤浩市、中川安奈、渡瀬恒彦
製作総指揮:徳間康快
製作国:日本
製作年:1988年
配給:東宝
劇場公開日:1988年6月25日
ジャンル:歴史劇

DVD ほか

VOD(ビデオ・オン・デマンド)

映画『敦煌』における物語の転機

11世紀の中国が舞台であり、史実をもとにした歴史映画。北宋の時代、科挙の試験に落ちた趙行徳(佐藤浩市さん)は、街で西夏の女(三田佳子さん)を助けたことをきっかけに、新興国の西夏に興味を持ち、尉遅光(原田大二郎さん)の隊商と共に西域へ向かう。しかし、途中で西夏軍漢人部隊の兵士狩りに遭い、無理やり部隊に入れられてしまう。その部隊の隊長が朱王礼(西田敏行さん)。朱王礼は趙行徳に目をかけ、趙行徳もまた次第に朱王礼に魅力を感じ始める。

その後、趙行徳は西夏軍の一員としてウイグルに侵攻し、そこでウイグル国の王女、ツルピア(中川安奈さん)と出会いかくまう。二人で脱走を試みるが失敗――。朱王礼は趙行徳に寛大な処分を下し、西夏の王、李元昊(渡瀬恒彦さん)の命令で文字の研究のために西夏の首都へ派遣される役を与えた。その間、ツルピアを朱王礼が保護するという約束を三人で交わす。しかし、趙行徳の研究期間が延び別れから二年後、ツルピアのことを知った李元昊は、ウイグルの統治に利用するためにツルピアとの政略結婚を企てる……。この出来事は、歴史劇の大きな転換点となった。

そして、舞台は敦煌――。この地にも西夏軍の侵略が迫る。敦煌には教典や書物、美術品などの貴重な文化遺産が膨大にあるが、かつてはさほど興味のなかったこういった文化遺産に趙行徳は価値を見いだすようになっていた。

映画の製作においては、映画化権に関すること、中華人民共和国からの撮影許可、莫大な製作費、芸術的な部分での意見の相違、キャスティング、歴史的な事実関係についてなど多くの難題があったため、完成までに長い年月が費やされました。

延べ10万人のエキストラ、4万頭の馬によるロケーション……など、35億または45億ともいわれる巨費が投じられました。主演の西田敏行さんをはじめ豪華キャストで壮大なスケールで描かれた、井上靖原作の歴史大作です。

映画を原作と比較すると、ストーリーを明確に簡潔にし、映像効果を高める脚本であると感じました。映画作品として完成させるうえで、細かい場面描写は、大幅に省略したり書き換えたりしてあります。

第12回日本アカデミー賞(1989年)では、作品賞、監督賞(佐藤純彌さん)、主演男優賞(西田敏行さん)を受賞しました。

▶関連記事:『敦煌』井上靖 ‐ 莫高窟の真相はいかに

タイトルとURLをコピーしました