映画『容疑者Xの献身』(西谷弘監督/2008年製作)について、そのテーマや登場人物、物語の魅力をさまざまな角度から掘り下げていきます。
容疑者Xの献身

映画作品情報
監督:西谷弘
脚本:福田靖
原作:東野圭吾『容疑者Xの献身』(文春文庫 刊)
出演者:福山雅治、柴咲コウ、北村一輝、松雪泰子、 堤真一 ほか
製作年:2008年
製作:フジテレビジョン、アミューズ、S・D・P、FNS27社
製作委員会:東宝、フジテレビジョン、吉本興業、ワニブックス、電通、セディックインターナショナル、バーニングプロダクション
配給:東宝
劇場公開日:2008年10月4日
Blu-ray/DVD ほか
VOD(ビデオ・オン・デマンド)
完全犯罪の裏に隠された人間ドラマ
映画『容疑者Xの献身』は、天才物理学者が難事件を解決する、推理小説「ガリレオ」シリーズの同名小説を原作にしている。ガリレオこと天才物理学者の湯川学(福山雅治さん)が主人公。「ガリレオ」シリーズは東野圭吾さんの人気シリーズのひとつで、第3弾の『容疑者Xの献身』は長編作。
「容疑者Xの献身」では、アパートに住む母子が事件を起こす。花岡靖子(松雪泰子さん)は弁当屋の店長をしながら、中学生の娘・美里(金澤美穂さん)とアパートで暮らしていた。
ある日、靖子の元夫・富樫慎二(長塚圭史さん)が、花岡親子の居所を突き止めて突然訪ねてきた。富樫慎二は、靖子の二度目の夫であり、娘の美里との血縁関係はない。富樫慎二は、靖子がホステスをしていたときに知り合い結婚した男で、結婚した当時はサラリーマンであった。
離婚の原因は、富樫慎二が横領をして会社を解雇されたうえ、妻子に暴力を振るっていたことにある。それにもかかわらず、富樫慎二は花岡親子につきまとい、靖子が警察に相談してもうまくかわしていた。
富樫慎二は、やり直したいと言っているが、金銭目的で訪れてきたようだ。靖子は、仕方なく富樫慎二にお金を渡して追い返そうとする。だが娘の美里は、我慢できずに富樫慎二を後ろから殴打。殴打された富樫慎二は、美里に襲いかかる。靖子と美里の二人は、怒り狂った富樫慎二を、炬燵のコードで絞殺してしまう。
そこへ隣に住む石神哲哉(堤真一さん)が、騒ぎを聞き付けて駆けつけてくる。石神哲哉は、靖子に対して密かに恋心を抱いており、二人を助けることを決意し、死体の処理やアリバイ工作を手伝う。
石神哲哉は高校の数学教師をしている。偶然にも、湯川と草薙(北村一輝さん)とは帝都大学の同期であり、湯川が天才と認めるような人物であった。石神哲哉は、数学の研究者になりたかったが、家庭の事情により断念していた。
この映画では、石神哲哉役の堤真一さんと、花岡靖子役の松雪泰子さんの熱演も話題になった。花岡美里役の金澤美穂さんは、この作品で映画デビューを果たした。
この映画作品では、原作における石神哲哉と花岡靖子の深層心理が見事に演じられている。そして、旧友と対峙することになった湯川学。
原作と同様に、石神の計算されたトリック(論理)と、彼の愛情や道徳観(倫理)がせめぎ合う部分が見どころ。この作品に描かれているのは、「愛と論理の交錯」であり、「愛と倫理の葛藤」でもある。
そして衝撃のラスト。最後の手段にでる石神と、その時にとった花岡靖子の行動。ラストシーンが意味することも、原作同様に人間ドラマを体現している。