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『博士の愛した数式』記憶障害になっても慈愛と数学は忘れない【映画評】

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この記事では、映画『博士の愛した数式』について、そのテーマや登場人物、物語の魅力をさまざまな角度から掘り下げていきます。

博士の愛した数式

博士の愛した数式
出典:Amazon

映画作品情報

監督・脚本:小泉堯史
原作:小川洋子
出演者:寺尾聰、深津絵里、齋藤隆成、吉岡秀隆、浅丘ルリ子 ほか
製作年:2005年
配給:アスミック・エース
劇場公開日:2006年1月21日

Blu-ray/DVD ほか

記憶障害になっても慈愛と数学は忘れない(映画評)

映画『博士の愛した数式』は、専門が数学の元大学教授(寺尾聰さん)とその家政婦・杏子(深津絵里さん)を中心とする物語。

天才数学者の博士は、不慮の交通事故に遭ったときの後遺症により、記憶が80分しか持たない。
交通事故の前の記憶は残っているが、その後の記憶は80分で消えてしまう。
博士は、記憶障害になっても慈愛と数学を忘れなかった人。

博士は、未亡人である義姉(浅丘ルリ子さん)の家の離れ屋で、家政婦の助けを借りながら暮らしている。
義姉は、交通事故のときに、博士の運転する車に同乗しており、その時の後遺症で足が悪い。
博士には、義姉のことに関しては交通事故の前の記憶がある。
しかし、家政婦のことは次の日になると忘れてします。
博士の自宅を訪れる家政婦は、毎朝、玄関で初対面のような挨拶を交わすことになる。
博士の家で働く家政婦たちは、家政婦を依頼している義姉から、博士の記憶障害のことは説明を受けているが、長続きしない人が多いらしい。

博士自身も、80分で記憶が消えることで、混乱することがある。
そういった状況のなかで博士は、数字を持ち出すことで人と関わる。
博士は、記憶障害になっても、人を慈しむ心と数学を忘れていなかった。

杏子もまた初めは困惑していたが、博士の優しさに触れるうちに、親しみを抱き、敬意を持って接した。
杏子は、10歳の息子(齋藤隆成さん)と二人暮らしをしている、シングルマザーの家政婦である。
そのことを知った博士は、杏子が帰るまで小学生の子どもが一人で待っていることを、ひどく心配する。
杏子はずっと続けてきたことだと博士に伝えるが、博士は納得しない。
博士は、学校が終わったらここに来て一緒に夕飯を食べようと提案する。
この提案は、家政婦の職務規定に違反するが、義姉の了承もあり、家政婦紹介所の許可を得て実現する。
母子は、人への敬意を忘れず、純粋に数学を愛する博士に惹かれてゆく。

博士は、杏子の息子のことを数学記号のルートと呼んだ。
頭が平らで、脳味噌が詰まっていそうだからとのこと。
この杏子の息子は、後に中学校の数学教師(吉岡秀隆さん)になる。
映画『博士の愛した数式』では、ルートがクラスの最初の授業で博士との思い出を語っている。
学校では、ルートという渾名がすでに定着しているようだ。

なお原作は、シングルマザーの家政婦である「私」の視点で描かれている。

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