この記事では、実写映画『舟を編む』について、そのテーマや登場人物、物語の魅力をさまざまな角度から掘り下げていきます。
舟を編む
作品情報
監督:石井裕也
脚本:渡辺謙作
原作:三浦しをん「舟を編む」(光文社 刊)
出演者:松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー、 黒木華 ほか
製作年:2013年
製作:「舟を編む」製作委員会
(テレビ東京、松竹、アスミック・エース、電通、光文社、朝日放送、テレビ大阪、読売テレビ、朝日新聞社、フィルムメイカーズ、リトルモア)
製作プロダクション:リトルモア、フィルムメイカーズ
配給:松竹、アスミック・エース
劇場公開日:2013年4月13日(日本初公開)
ジャンル:現代劇
Blu-ray/DVD ほか
ビデオ・オン・デマンド(VOD)
完全な人間でなくても一つの事に没頭したい
実写映画『舟を編む』の劇場公開は2013年。監督を石井裕也さん、脚本を渡辺謙作さんが務めた。原作は三浦しをんさんの同名小説。出演は、松田龍平さん、宮﨑あおいさんら。
完全な人間でなくても一つの仕事に没頭できる人は魅力的である。
舟を編むとは、辞書を編集するという意味。
原作者の三浦しをんさんは、辞書を言葉という大海原を航海するための舟に例え、このタイトルを付けた。
その辞書を編纂しているのは、生身の人間。
ただし辞書編集部には、人とは少し違う視点を持つ人間が多いのかもしれない。
作品では、個性的な人々による、さまざまな出来事が描かれている。
主人公は、出版社・玄武書房に勤める馬締光也(まじめみつや/松田龍平さん)。
馬締という名字は実在し、全国に10世帯50人ほどいるらしい。
馬締は、大学院で言語学を専攻した高学歴の社員。
馬締は、名前の通りに真面目な性格で、冗談や皮肉が通じず、他人の言葉を額面通りに受け取る。
入社当初配属された営業部では、変わり者として持て余され、社内でも浮いていた。
その馬締光也役を松田龍平さんが演じた。
馬締光也は、営業部では変り者として扱われる存在であったが、転機が訪れる。
辞書編集部のベテラン編集者・荒木公平(小林薫さん)が、馬締の言葉のセンスを見いだし、辞書編集部に引き抜いたのだ。
荒木は、玄武書房で辞書一筋の編集者。
馬締のことを知った荒木は、営業部を突然訪れ、馬締をつかまえて「右」を定義せよとテストする。
納得の答えが返ってきたことで、馬締は辞書編集部に異動。
荒木公平は、定年間近であり、後継者を探していた。
馬締光也は、辞書編集部なら、言語学を専攻したキャリアや言語感覚の鋭さなどを発揮できるはず。
言葉への執着があり、粘り強いという、馬締光也の持つ元来の性質は、辞書編集部に適している。
馬締が異動したときの玄武書房・辞書編集部では、中型国語辞典「大渡海」(だいとかい)の刊行を計画していた。
「今を生きる辞書」という編集方針を掲げている。
中型国語辞典の編纂は、完成まで15年かかる一大事業。
馬締が辞書編集部に異動したときの年齢は、27歳。
映画の舞台は、辞書編纂を開始した時期と、その十数年後に大きく分かれている。
十数年後には、馬締は主任に昇進しており、「大渡海」編纂の責任者を任されている。
私生活では、馬締は学生時代からの下宿「早雲荘」に住み続けていた。
「早雲荘」の大家のタケ(渡辺美佐子さん)はやさしい人柄。
ある日馬締は、大家の孫娘・林香具矢(はやしかぐや/宮﨑あおいさん)と出会い一目漏れ。
林香具矢を宮﨑あおいさんが演じた。
言葉が豊富な馬締であるが、彼女に気持ちを伝えるのに、どういった言葉がふさわしいのか悩んでしまう。
恋に関しては、呆れるほど不器用。
林香具矢は、馬締と出会ったときは板前の見習いで、十数年後には小料理屋を営んでいる。
香具矢もまた馬締の良き理解者となった。
そしてこの恋は成就し、二人は結婚する。
途中でトラブルもあったが、恋も辞書編纂も、馬締の良き理解者の協力により、成し遂げることができた。
この映画の原作は、三浦しをんさんの同名小説。
三浦しをんさんは、この『舟を編む』(光文社, 2011年9月)を執筆するにあたって、岩波書店および小学館の辞書編集部を取材したとのこと。
小説『舟を編む』は、女性ファッション雑誌『CLASSY.』の2009年11月号から2011年7月号にかけて連載され、2011年9月に光文社から単行本が刊行された。