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『百年の孤独』G・ガルシア=マルケス 幻想と現実を融合した想像力の世界【書評】

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読み始めると、何が起こったのだろうという興味に駆られ読み進めることになるが、あまりにも突飛なことが起こるので、次第に本作が幻想的な作品であることに気づく。だが、ある開拓者一族の歴史を通して、コロンビアの人々の多難な歴史についても触れていることは確かだ。

辺境の村マコンドとその土地を開拓したブエンディア家の百年の歴史。開拓者らは生まれた村を離れ、辿り着いた土地をマコンドと名付けた。スペインから独立したコロンビアで保守派と自由派が対立し内戦に至ったときは、彼らもその内戦に加わった。そして代が替わるにつれて、内戦のことも忘れられていく。

一族の隆盛と衰退。一族百年の歴史が日常の些細なことまで一冊に圧縮されているので、ふつうなら目まぐるしく感じそうだが、不思議と理解しやすい。物語の後半で百歳を越える二人の女性(ひとりは百四十五歳を越えた)や似たような名前を付けられた一族の男性陣が、物語を推し進め、読者がブエンディア家を知るための手助けをしてくれる。

ブエンディア家に嫁いできた個性的な女性たちや、ブエンディア家の娘が家に連れてきた夫らの存在も欠かせない。その他の登場人物も個性的であり、物語を盛り上げ飽きさせない重要な存在になっている。そして、何代にも亘って住み続けている家での出来事など、日常の描写までユーモアに描かれている。このおかげで、読者は小説を楽しみながら、飽きずに読み進めるのではないだろうか。

ページを繰っていくと、些細なことまで誇張され、本作では常に何かが起こる。開拓者一族の歴史であり、人間劇場であるが、必ずと言っていいほど不可思議な話に発展する。これがこの小説の面白さであり良さなのだろう。作り話のような出来事やファンタジーの世界が現実のように描かれているが、現実離れした話に引っ掛かってばかりいては、この小説を素直に楽しめない。

物語の終盤に「文学は人をからかうために作られた最良のおもちゃである」という、少々独断的な言い回しがある。ブエンディア家の人間ではなく、その連れが彼らの交流相手である学者(カタルニャ生まれの元古典文学教師、本屋を営む)をまねたものであるが、まさにこの小説のユーモラスな部分を表しているのではないだろうか。

1982年にガブリエル・ガルシア=マルケス氏はノーベル文学賞を受賞した。その際の授賞理由は、「彼の小説や短編小説では、幻想と現実が豊かに構成された想像力の世界で組み合わされ、大陸の生活と葛藤を反映している」といった内容であった。

コロンビアの作家ガブリエル・ガルシア=マルケス氏(1927-2014)が、スペイン語で発表した「百年の孤独」。1967年にアルゼンチンのスドゥアメリカーナ(Sudamericana)社から初版が刊行され、日本語版は鼓直氏の訳で1972年に新潮社より刊行された。翻訳の際、スドゥアメリカーナ社の第七版を底本とし、ジョナサン・ケープ(JonathanCape)社の英語版が参考にされた。また、同訳者による改訂版が1999年に新潮社より刊行されたが、その際、スペイン語圏で発行された新版が参照されている。

百年の孤独/ガブリエル・ガルシア=マルケス
出典:Amazon
作品情報

書名:百年の孤独
著者:ガブリエル・ガルシア=マルケス
翻訳:鼓 直
出版:新潮社

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