この記事では、海部陽介氏の著書『日本人はどこから来たのか?』を紹介します。
日本人はどこから来たのか? 海部陽介・著
書誌情報
書名:日本人はどこから来たのか?
著者:海部陽介
出版社:文藝春秋
発売年月:単行本 2016年2月/文庫本 2019年2月/電子書籍 2019年2月
ページ数:単行本 216ページ/文庫本 256ページ
ジャンル:ノンフィクション
Cコード:0195(日本文学・評論・随筆・その他)
日本人の祖先が渡ってきた3ルート
海部陽介氏によれば、アフリカから拡散したホモ・サピエンスが日本列島に到達したのは、旧石器時代の人類遺跡が突如爆発的に現れる3万8000年前以降と考えられるようだ。アフリカを出て東へ向かったホモ・サピエンスは、ヒマラヤ山脈の南ルートと北ルートに分かれて、さらにユーラシア大陸を東へ向かう。そして、彼ら彼女らの一部は東アジアで再会した。
日本へのルートは3つ。3万8000年前の対馬ルートを皮切りに、3万5000年前の沖縄ルート、2万5000年前の北海道ルートと続く。対馬ルートと沖縄ルートでは、船による航海が必要になるが、南ルートを辿ってきた人々にはその技術があった。南北からはそれぞれ南ルートおよび北ルートの系譜を引き継いだ集団が渡ってくるが、対馬ルートを渡ってきた集団は両集団が混じった人々だった。
5万〜3万年前頃の日本列島の海面は、今より80メートルほど低かった。さらに2万年前頃には、日本列島の海面が現在よりも約130メートルも下がった位置に。その後の急激な温暖化により、日本列島は現在のような形状になるわけで、氷期の旧石器時代は現在よりも航海しやすかった。とはいえ、沖縄ルートは特に難し航海であったはず。
氷期の日本列島は、本州・四国・九州がつながり一体となっていて、北海道はサハリンを介してアジア大陸から伸びる半島の先端となっていた。アジア大陸の黄海がほぼ消失し、朝鮮半島と日本列島との海峡は今より狭く、琉球列島の島々も少し拡大していたなど、現在よりも陸域が広がっていた。
3万8000年前に始まった日本列島の後期旧石器時代は、2万年あまり継続する。この集団が、その後の縄文人であると考えていいようだ。ただし、本州領域と北海道の縄文人は、異なるルートで列島へ入ってきた、異なる集団とみたほうがよい。縄文時代は、1万6000年前頃に始まり、1万3000年以上続く。縄文時代にも周囲から日本への移住と混血はあったが小規模と考えられる。
そして、2500年前に弥生時代を迎える。それ以降、縄文人の系譜を受け継ぐ人々と、あらたに大陸から渡ってきた人々が混血し、日本人が形成された。
海部陽介氏の著書『日本人はどこから来たのか?』は、2016年2月に文藝春秋より刊行された。同書の刊行当時、著者は国立科学博物館の「人類史研究グループ長」を務められていた。本書は一般向けに書かれている。