小説

『アンソーシャル ディスタンス』金原ひとみ 2、30代の男女の閉塞感や恋愛【書評】

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金原ひとみさんの『アンソーシャル ディスタンス』には、5編の短編小説が収められている。いずれの作品も初出は文芸誌『新潮』。本書は第57回谷崎潤一郎賞受賞作。テーマは恋愛と性と命について。あるいは閉塞感や死生観といったもの。内容は少し過激。

5編の題名と掲載号は次の通り。

ストロングゼロ(Strong Zero) 2019年1月号
デバッガー(Debugger) 2019年8月号
コンスキエンティア(Conscientia) 2020年1月号「アンコンシャス」から改題
アンソーシャル ディスタンス(Unsocial Distance) 2020年6月号
テクノブレイク(Technobreak) 2021年1月号

2、30代の男女の閉塞感や恋愛をテーマにした作品集であるが、新型コロナウイルス感染症の流行が始まってから発表された、「アンソーシャル ディスタンス」と「テクノブレイク」の2編に関してはパンデミックをモチーフとして取り入れている。

また本書は女性主人公が内面を告白するような表現形式である。
表題作「アンソーシャル ディスタンス」では、男性側の視点も織り交ぜながら、二人が意思疎通を図るための、心の動きが描かれていた。

5編は恋愛や家庭での出来事であるが、少し過激な性描写が多い。登場人物は、ビジネスウーマンやOL、学生などという違いはあるが、金原さんが、2004年に第130回芥川賞を受賞された『蛇にピアス』に通じる。

性の営みや自慰行為の描写は生々しく、普段から強い興味や経験?がなくては中々描けない詳細さがあった。メイクや美容などのことも、女性ならではの具体性で綴られている。

本作は2019年から2021年ごろの現代が舞台。2、30代の男女の話だが、登場人物が使いそうなネットスラングを多用している。中二病の漢字表記も厨二病であった。金原さんは1983年生れだが、そういった種類の日本語にも強いようだ。本書は第57回谷崎潤一郎賞受賞作であるが、時代の流れを感じた。

アンソーシャル ディスタンス(新潮社)/金原ひとみ
出典:Amazon
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