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『コンビニ人間』村田沙耶香 ‐ 少し怖いがすかっとするユーモア小説【書評】

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この記事では、村田沙耶香さんの小説『コンビニ人間』について、そのテーマや登場人物、物語の魅力をさまざまな角度から掘り下げていきます。

コンビニ人間 村田沙耶香・著

コンビニ人間(村田沙耶香, 文春文庫)の表紙
出典:Amazon

書誌情報

書名:コンビニ人間
著者:村田沙耶香
出版:文藝春秋
発売年月:単行本 2016年7月文庫本 2018年9月電子書籍 2018年9月
ページ数:単行本 160ページ/文庫本 176ページ
ジャンル:小説

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少し怖いがすかっとするユーモア小説

村田沙耶香さんの小説『コンビニ人間』は、第155回(2016年上半期)芥川賞受賞作。初出は「文學界」2016年6月号です。

村田沙耶香さんは1979年千葉県生まれ。
2003年に『授乳』が第46回群像新人文学賞優秀作となり作家デビューを果たしました。09年に『ギンイロノウタ』で第31回野間文芸新人賞を受賞。13年に『しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞を受賞。(巻末より引用)
その後の著作も多数あります。
デビューしてから13年目での芥川賞受賞です。作家としてのキャリアを積んだうえでの芥川賞受賞でしたので、『コンビニ人間』が高く評価される作品になったのも納得できます。

主人公・古倉恵子は「コンビニ愛」の強い女性です。物語はコンビニ店員の古倉恵子の視点で語られます。彼女は正社員ではなくアルバイト店員です。
大学一年生のときにちょっとした偶然で始めて以来、同一店舗でのアルバイト勤務を続け、18年が経ちました。彼女は36歳未婚で彼氏もいません。

当時、村田沙耶香さんが実際にコンビニエンスストアで働いていたことも話題になりました。村田沙耶香さんが芥川賞を受けたときの年齢も36歳でした。

冒頭の場面は古倉恵子が働くコンビニエンスストアの店内です。書き出しの主人公の語りからは仕事のできる女性という印象を受け、好感を持ちそうになりますが、次の節ですぐに打ち消されます。
次の節は古倉恵子が子供時代を回想する場面ですが、彼女が奇妙がられる子供であったことが分かります。ただ、コンビニ店員としての古倉恵子の優秀さをうかがえる場面が随所にあります。

古倉恵子は、一見普通に見えますが変わっていて、子供の頃から狂気じみた言動をとることがありました。周りにいる当事者にとっては危険でさえありました。
大人になった古倉恵子も、恐ろしいことを考えてしまいます。コンビニという誰もが知っているリアルな世界を舞台に、生身の人間の実態やグロテスクな部分などがユーモアを交えて描かれています。

「コンビニ人間」の主人公は、かなりエキセントリックで狂気じみています。村田沙耶香さんは、登場人物を動かしてストーリーを進めるという感覚が強いタイプの作家のようです。主人公が思いがけない行動をとってしまった、と仰っています。

村田沙耶香さんは、子供の頃は「普通」という言葉に苦しめられ、おとなしくて泣き虫な子どもでした、と明かしたことがあります。内気でおとなし過ぎて生きづらさを感じていたそうで、生きづらさがずっと自分のテーマになっていたそうです。
村田沙耶香さんの場合、浮いていたというわけではなく、沈んでいたというほうが正しいとのことなので、だいぶ違いますが古倉恵子も違う形で生きづらさを感じています。村田沙耶香さんは、そのような事を思いながら『コンビニ人間』を書いていたようです。

村田沙耶香さんによれば、本作に寄せられる読者の感想は、「すかっとした」という人と「ものすごく怖かった」という人に分かれるそうです。女性は「すかっとした」という方が多く、男性のほうからは「怖かった」という意見をよく聞くそうです。
僕の場合は両方でした。ただ、「すかっとした」というよりはユーモア小説として面白かったという感想です。古倉恵子の子供時代の言動は怖いし引いてしまいます。大人になってからも、考えていることが怖い。白羽というストーカー男を自宅アパートへ連れ込んでしまう行動も怖い。結末などでの古倉恵子による白羽への対処にはすかっとしますが、これは彼女だからできたことでしょう。

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