この記事では、カール・イグレシアスさんの著書『「感情」から書く脚本術:心を奪って釘づけにする物語の書き方』を紹介します。
「感情」から書く脚本術 カール・イグレシアス・著
書誌情報
書名:「感情」から書く脚本術:心を奪って釘づけにする物語の書き方
原題:Writing for Emotional Impact: Advanced Dramatic Techniques to Attract, Engage, And Fascinate the Reader from Beginning to End)
著者:カール・イグレシアス
翻訳:島内哲朗
出版社:フィルムアート社
発行年月:2016年4月
Cコード:C0074(演劇・映画)
紙書籍
電子書籍
脚本家としての仕事は2つ
『「感情」から書く脚本術』の著者、カール・イグレシアスさんは脚本家であり、脚本コンサルタントでもある。UCLA(University of California, Los Angelesの略, カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で講座を受け持つなど脚本家の育成にも取り組んでいるアメリカ人。
カール・イグレシアスさんの経歴については、フィルムアート社の公式サイトに次のような著者情報が記載されていた。
UCLAの課外脚本執筆講座、スクリーンライティング・エキスポ、そしてオンライン講座であるライターズ・ユニバーシティで教鞭をとる。クリエイティブ・スクリーンライティング誌にも定期的に脚本技巧について寄稿している。
「感情」から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方 | 動く出版社 フィルムアート社 (filmart.co.jp)
カール・イグレシアスさんによれば、脚本家としての仕事は2つ。第一に、「想像上の世界とそこに生きる登場人物を創造する」こと。これは良い物語を作ることであり、脚本家の仕事の基礎である。これには、コンセプト作りやキャラクター造形、プロットの考案、構成なども含まれる。
そして第二に、「脚本を読む人に与える感情的影響を考え出す」こと。これは、話術巧みに語ることとも言い換えることができる。カール・イグレシアスさんは、小説家や映画作家が話下手では、物語がつまらないとまではいえないが、作品にうんざりしたことは、誰でも一度はあるはずだとまで、述べている。
カール・イグレシアスさんの著書については、タイトルが示す通り「感情」がキーワードになっている。脚本家の仕事は、感情を売るビジネスなのだから、感情を掻き立てる技巧が求められる。そして、映画の脚本なのだから、話術を操るための感情とキャラクターの感情表現がポイント。
話術を巧みに語るための感情は3つあり、それは「見たい(覗きたい)、わかる(相手の気持ちになる)、感じる(理屈抜きに本能で感じる)」という感情。全てにおいて、読者(脚本の下読み)の感情を奪うことが理想。つまり、映画を観ている以上、頭で考えるより心で感じたいと思うのが自然であり、脚本を読んでいる人にとっても、同じように感じてもらえないと困るとのこと。
本書では、脚本家たちが実際に使う具体的なテクニックが紹介されている。その素晴らしいテクニックを盗もうという内容であり、そういった本をお探しの人には、まさに打ってつけの内容と言えそうだ。ただし、本書は基礎の次の上級編であり、上級テクニックが紹介されているのだから、もしも脚本執筆の技巧を勉強中というなら、まず基本をしっかり学ぶべきでしょう。
なお、カール・イグレシアスさんの著書に『脚本を書くための101の習慣』(フィルムアート社, 2012年7月)という本があり、こちらは成功を収めている脚本家たちの行動からヒントを得ようという内容。
『「感情」から書く脚本術』の章立ては次の通り。
目次 INTRODUCTION 感情をお届けする商売 CHAPTER 1 読者:唯一のお客さん CHAPTER 2 コンセプト:その物語にしかない魅力 CHAPTER 3 テーマ:普遍的な意味 CHAPTER 4 キャラクター:共感を掴む CHAPTER 5 物語:高まる緊張感 CHAPTER 6 構成:のめりこませるための設計 CHAPTER 7 場面:心を奪って釘づけにする CHAPTER 8 ト書き:スタイリッシュに心を掴む CHAPTER 9 台詞:鮮烈な声 CHAPTER 10 最後に:ページに描く
このように、本書は充実した内容になっています。ただし、中身は上級者向けであり、基礎的な事を学びたい人向きではありません。