出口治明氏の著書『哲学と宗教全史』(ダイヤモンド社, 2019年)を紹介します。
「哲学と宗教」と聞くと、難解で敷居の高いテーマに感じるかもしれません。しかし、出口治明氏の『哲学と宗教全史』は、そのような固定観念を覆し、3000年にわたる思想の流れをシンプルかつ明快に解説した一冊です。
本書は、古代ギリシャから現代までの哲学と宗教の歴史を包括的に整理し、「世界を丸ごと理解する」ための視点を提供します。著者の出口治明氏は、世界1200都市を訪れ、1万冊以上の本を読破してきた「知の巨人」。その豊富な知識と論理的思考によって、難解に思える哲学や宗教のテーマも、驚くほど分かりやすく語られています。
なぜ哲学と宗教を一緒に語るのか? それは、両者が独立したものではなく、歴史を通じて絡み合いながら発展してきたからです。出口氏は「木を見て森を見ず」ではなく、「森全体を捉える」ことを重視し、本書を執筆しました。その結果、哲学と宗教の関係性を俯瞰しながら、現代社会における意義まで考えさせられる内容となっています。
本記事では、本書の魅力や読みどころを詳しく紹介していきます。哲学や宗教に詳しくない人でも楽しめる一冊なので、ぜひ最後までご覧ください。
哲学と宗教全史 出口治明・著

書誌情報
書名:哲学と宗教全史
著者:出口治明
出版社:ダイヤモンド社
発売年月:単行本 2019年8月/電子書籍 2019年8月
ページ数:単行本 468ページ
Cコード:C0010(哲学)
紙書籍
電子書籍
出口治明『哲学と宗教全史』── 3000年の思想を一望する
出口治明氏の『哲学と宗教全史』(ダイヤモンド社, 2019年)は、そのタイトル通り、哲学と宗教の壮大な歴史を一冊にまとめた作品です。古代ギリシャから現代に至るまでの思想の流れが明快に整理されており、内容の充実度はもちろん、分かりやすさにも満足できる一冊でした。
哲学者や宗教家とは、世界を丸ごと理解しようとした人々です。本書を通して3000年にわたる哲学と宗教の歴史を読み解くことで、多くの気づきを得ることができます。
本書が「哲学と宗教」を一体として扱っているのには理由があります。出口氏は、哲学書の執筆を依頼された際、「哲学と宗教はグラデーションのようにつながっている」と考え、両者を分けずに包括的に書くことを提案しました。これは、氏が「木を見て森を見ず」という視点を避け、物事を包括的に捉えることを重視しているためです。本書もその姿勢を反映し、「すべてをまるごと」理解できる構成になっています。
知の巨人・出口治明の視点
出口治明氏は、世界1200都市を訪れ、1万冊以上の本を読破してきたことで知られる「知の巨人」です。その深い知識と確かな考察に基づいた本書は、信頼性が高く、安心して読むことができます。
また、出口氏の文章は非常に分かりやすく、読み手に寄り添うものです。その背景には、氏の恩師である国際政治学者・故 高坂正堯氏(1934年 – 1996年)の教えが影響しているようです。高坂氏は「古典を読んで分からなければ自分がアホやと思え。今生きている人の話や文章が分からなければ、相手がアホやと思え」と語っていたといいます。この考えが、出口氏の明快な語り口を形作っているのかもしれません。
歴史を科学として捉える視点
本書では、歴史を「科学」として捉える出口氏の姿勢が一貫しています。氏は「数字・ファクト・ロジック」を重視し、歴史を文学的ではなく、科学的に分析することの重要性を説いています。また、自然科学も人文科学も、人間や社会を理解するために必要であり、現代社会にも哲学や文学が不可欠であると述べています。
哲学がなぜ必要なのか──その問いに対する出口氏の考えは非常に示唆に富んでおり、本書を通じて多くの学びを得ることができました。哲学や宗教の歴史を通じて、私たちは世界の成り立ちを理解し、現代に活かせる洞察を得ることができます。本書は、まさに「過去を知ることで未来を考える」ための一冊です。