文学とは何かを考える前提として、どのような作品が文学として扱われるのかについてです。詩歌や小説についてはあまり触れずに、ここでは文学に含まれるノンフィクション作品の特徴を中心にまとめ、映画との親和性などについても触れています。
文学におけるフィクションとノンフィクション
そもそも英語のフィクション(fiction)とは、写実的な小説(novel)と空想的な小説(romance)の両方を含めて、あらゆる創作物を指します。また、詩、劇、その他のジャンルと類別する用語です。
そして、従来ノンフィクション作品は、伝記・歴史・随筆などを指します。
文学として扱われるノンフィクション作品
文学として扱われるノンフィクション作品は、一般的にジャーナリスティックな視点で書かれたドキュメンタリーやルポルタージュなどの中でも、構成や表現などの文学性を重視していると思われる作品です。物語性のある作品、あるいは読み物としての性格が強いルポルタージュや手記という言い方もできます。目安としては、日本図書コードで文学に分類されているかどうかです。
これらの作品は、読者へのアプローチにおいて、言語や文体の美しさや表現力に重点を置いたと考えてよいのではないでしょうか。文学的な手法を駆使して、著者の個性や感情を反映させることを重視しているのでしょう。
文学作品の目的のひとつは、読者の感情や洞察を喚起し、美的な鑑賞や文学的な楽しみを提供することです。また、著者の個人的な視点や思考、文学的な表現を通じて、人間の経験や人間関係、社会の問題について探求することにも意義があります。
ノンフィクション作品には、現実の出来事や事実に基づき、実際の事象や情報について書かれています。話を少し広げると、広義のノンフィクションは伝記、歴史、科学、自己啓発、ジャーナリズムなど多岐に渡ります。これらの作品が目指すのは、研究、調査、経験に基づいて信頼性のある情報を提供すること。広義のノンフィクションはかなり幅広くなります。
エッセイという場合は?
エッセイに関しては、自由な形式で書かれた言語表現作品の中で、小説・戯曲・詩歌等のフィクションを除く思索性のある散文作品。あるいは、見聞、経験、感想などを書き記したり、個人的観点から特定のテーマについて物事を論じたりするなど。
見聞、経験、感想などを書き記した文章に関しては、日本語では特に随筆といいます。一方、エッセイに関しては、感想風の小論文、気軽に意見などを述べた散文というような説明が多くなされます。よって、自由な形式で見聞、感想、意見などを述べた散文がエッセイと、区別できるかもしれません。
評論について
特定の文学作品や芸術作品に対して批評や分析を行うことを目的とする評論についても、文学カテゴリーに含まれます。評論は、作品の特徴やテーマ、文体などについて探求し、著者の意見や解釈を通じて、作品の評価や深い理解、洞察を提供することを目的としています。
創作は個人の感受性と想像力が生みだす表現の仕事であり、批評はそれらから重要な新しい認識を読みとり理知的に抽象化する仕事であって、分業協力の関係にあります。批評の方法は、表現の魅力を味わい、楽しみながらつむぎ出すものであり、感覚的、主観的、直感的な文学活動です。重要な認識をできるだけ正確に意識化して示そうとはしますが、あくまで明確な思想にして示そうとする努力にすぎません。
文学ジャンルとしての演劇、文学と映画の親和性
古くから、演劇は文学の主要なジャンルのひとつでした。劇・芝居・戯曲・ドラマなど。よって、日本の伝統芸能である、能・狂言・浄瑠璃・歌舞伎なども、文学に含められるでしょう。
演劇は、さまざまな道具や装置を利用しており、劇作家や演出家、俳優のほかにも、音楽・衣装・照明などさまざまな職業の方が携わる総合芸術としての性質を持っています。映画においては、その総合性はさらに大きくなります。