評論・随筆・その他

森田良行さんの『〇〇をあらわす「基礎日本語辞典」』シリーズ

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KADOKAWA(角川ソフィア文庫)から発行された本に、『〇〇をあらわす「基礎日本語辞典」』というシリーズがある。著者の森田良行さんは、1930年東京生まれの日本の国語学者で、日本語学だけでなく日本語教育にも携わってきた方。

〇〇に入るのは、「気持ち」「違い」「時間」「思考」。

  • 『違いをあらわす「基礎日本語辞典」』角川ソフィア文庫, 2014年6月(紙書籍)/2014年7月(電子版)
  • 『気持ちをあらわす「基礎日本語辞典」』角川ソフィア文庫, 2014年6月(紙書籍)/2014年7月(電子版)
  • 『時間をあらわす「基礎日本語辞典」』角川ソフィア文庫, 2018年2月(紙書籍・電子版)
  • 『思考をあらわす「基礎日本語辞典」』角川ソフィア文庫, 2018年3月(紙書籍・電子版)

本書の元になっているのは、『基礎日本語辞典』 (森田良行, 角川学芸出版, 1989年5月)であり、項目内容からテーマ別に選び、再編集して文庫化したのが、上記の文庫版4冊。『基礎日本語辞典』は、一千数百ページの分量であり、一般的な小型国語辞典と同じくらいのサイズだが、森田良行さんはお一人で執筆された。

本書では、日常的で基礎的な語彙が、日本語のなかから抽出され、言葉の縦の動きと横の動きに言及しながら、丁寧に解説されている。縦の動きとは、もとの意味から現在の意味にどう至ったか、広がっていったのか。横の動きとは、似た言葉の意味や用法の違い。

日本図書コードの分類記号(Cコード)については、『基礎日本語辞典』はC0581(日本語)だが、4冊の文庫本はC0195(日本文学・評論・随筆・その他)。

『基礎日本語辞典』については、KADOKAWAの公式サイトによると、「日本語教師のためのバイブル」と称賛され続けている隠れたベストセラー(KADOKAWAの公式サイトより)、とのこと。続けて次のようなことも記載されている。

よく使う言葉ほど難しい! 従来の国語辞典には書かれていない言葉の微妙な意味と用法を、言葉の基本義を押さえて派生義までを詳しく解説。類語、反対語、文法、用法も学べ、日本語を学ぶ人・教える人に最適な辞典

「基礎日本語辞典」森田良行 [辞書・事典] – KADOKAWA

『基礎日本語辞典』を所有していれば、上記の4冊の文庫本は不要かもしれないが、電子版があるのでスマートフォンで閲覧できる、興味深いテーマだけをまとめて読めるなどのメリットがあるだろう。もしくは、文庫本のいずれか一冊を読んでみて、興味が湧いたら、元になっている辞典の『基礎日本語辞典』を購入するということでもよいかもしれない。

森田良行さんの「あとがき」によると、『〇〇をあらわす「基礎日本語辞典」』という文庫版・電子版シリーズの企画の発案者は、サンキュータツオさん(漫才師/日本語学者)とのこと。

『気持ちをあらわす「基礎日本語辞典」』におけるサンキュータツオさんの「まえがきにかえて―偉大な学者の魂の記録」には、本書の意義と価値が書かれている。ほかの国語辞典では、いくつかの意味をいきなり並列で説明しているが、本書では中心的な意味を先に解説して、他の用法や別の意味を、重層的で立体的に説明している、と。この試みがとくに基礎語において重要なことは、本書を読むと理解できる。また、初めて日本語を学ぶ外国人であっても、言葉の誤用が減る。

日本人であれば、何となく理解できることでも、外国人に日本語を説明するときには、根本的なところから意味と用法を伝える必要がある。

現代の使われ方において、語彙や用法が変化することがあり、人によっては不快に思うかもしれない。この辞典を読むことで、違和感を持つ理由がよりはっきりとするかもしれない。また、そういった言葉の説明においても、意味が広がりをみせる可能性についても言及している。むしろ、言葉の意味が広がっていく瞬間に立ち会えたと喜べるようになる、と。森田良行さんはこういったスタンスの国語学者のようだ。ただし、違和感の強い間違った言葉の使い方は、正す必要があるともお考えのはずだ。

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