本・小説

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』村上春樹【書評】 

この記事は約2分で読めます。

この記事では、村上春樹さんの小説『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』について、そのテーマや登場人物、物語の魅力をさまざまな角度から掘り下げていきます。

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 村上春樹・著

世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(村上春樹, 新潮文庫)の表紙
出典:Amazon

書誌情報

書名:世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
著者:村上春樹
出版社:新潮社
発売年月:単行本 2005年9月/文庫本 2010年4月/電子書籍 2020年12月
ページ数:単行本 624ページ/文庫本上巻 480ページ/文庫本下巻 416ページ
ジャンル:文芸作品

紙書籍

電子書籍

パラレルに進む二つの物語は緻密にリンク

村上春樹さんの『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は、二つの物語がパラレルに進む。
本作は、村上春樹さんにとっての、初の書下ろし長編小説。
1985年に新潮社から刊行された。
村上春樹さんは1949年1月生まれ。
30代の村上作品である。

本作は、村上春樹さんの4作目の長編小説。
初期三部作と呼ばれる、『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』『羊をめぐる冒険』の三作に比べると、文体は硬質に感じられる。

物語の世界は、村上春樹さんらしい叙情的でシュールな内容であり、かつ論理的。この小説は40章からなり、「ハードボイルド・ワンダーランド」の章と、「世界の終り」の章が交互に繰り返され、二つの物語はパラレルに進行する。
この小説は一人称単数で書かれた作品。「ハードボイルド・ワンダーランド」における視点は主人公の「私」、「世界の終り」における視点は主人公の「僕」である。そして僕の影の自称は俺。

「世界の終り」の部分は、自身の中編小説「街と、その不確かな壁」(『文學界』1980年9月号)を基にしているが、結末は大きく変えている。単行本の刊行は1985年。村上春樹さんは、この作品で第21回谷崎潤一郎賞を受賞した。

パラレルに進む二つの物語は、緻密にリンクしている。これらは実世界と脳や心の出来事。シュールであっても物語の世界に素直に入り込める。

「ハードボイルド・ワンダーランド」における主人公の職業は、計算士という暗号処理の仕事。年齢は35歳。8年前に離婚。組織(システム)に所属している。暗号を解読する記号士と、彼らの工場(ファクトリー)とは敵対関係。
「ハードボイルド・ワンダーランド」では、その他に大脳生理学などを研究している老・天才科学者や、その孫娘、図書館のリファレンス係の女の子らが登場。

「世界の終わり」では、主人公は街の門番から<夢読み>の仕事をするように言われる。主人公は、夢読みの仕事をする図書館で女の子と出会う。彼女の仕事は古い夢の番をすることと、夢読みのお手伝いをすること。

タイトルとURLをコピーしました