小説

『白鳥とコウモリ』東野圭吾 ‐ そういった人間ではないという疑問から真相が明らかに【書評】

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この記事では、東野圭吾さんの小説『白鳥とコウモリ』について、そのテーマや登場人物、物語の魅力をさまざまな角度から掘り下げていきます。

白鳥とコウモリ 東野圭吾・著

白鳥とコウモリ(東野圭吾, 幻冬舎)の表紙
出典:Amazon

書誌情報

書名:白鳥とコウモリ
著者:東野圭吾
出版社:幻冬舎
発売年月:単行本 2021年4月/文庫本 2024年4月
ページ数:単行本 523ページ/文庫本上巻 336ページ/文庫本下巻 360ページ

紙書籍

そういった人間ではないという疑問から真相が明らかに

東野圭吾さんの『白鳥とコウモリ』は、2021年4月に幻冬舎より刊行された。全面的な自供により起訴された被告人が語った内容は、真実なのか? そういった人間ではないという、被害者家族や加害者家族らの疑問によって真相が明らかに。

2017年の東京で事件が起きた。港区海岸の道路脇に違法駐車された車から、ナイフで腹を刺された男性の遺体が発見された。被害者の白石健介は、青山通りの近くに事務所を構える弁護士で、年齢は五十五歳。家族は、一歳下の妻・綾子と、二十七歳になる娘・美令。

刑事の五代努は、捜査の一環として被害者の弁護士事務所の電話記録を基に、愛知県三河安城市にある倉木達郎の自宅を訪れた。捜査を続けていると、倉木がある日突然、自供を始めた。動機は1984年に愛知で起きた殺人事件に繋がるという供述。自供を基に起訴されることになるが……。

倉木被告人の裁判が近づく中で、被害者遺族の母娘は、被害者参加制度を使うことに。証拠などの記録を読んだが、二人には健介の話のようには思えない。納得できない美令は、自ら真相を確かめようとする。そんな中、美令は父親が殺害された現場で倉木被告人の息子・和真と出会う。和真は、今回の事件が信じられないという思いでいた。何か腑に落ちない。被害者遺族と加害者家族。真逆の立場にいる二人だが……。

そして警察においても、裏付け捜査が思うように進まない。疑問点が浮上してくる。やはり倉木被告人は嘘をついているのでは。綾子と和真、そして五代らが協力することで、徐々に真実が明らかに。

本書では、ミステリー小説として事件を推理し真相を明らかにするとともに、被害者遺族と加害者家族、罪への償いについても焦点を当てている。被害者遺族と加害者家族という真逆の立場のどちらかに突然置かれること、その時に世間から浴びせられる非難、罪の重さについて考えさせられる作品であった。

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