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『大人のための言い換え力』石黒圭 文章がうまい人はTPOを考慮して書ける【書評】

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石黒圭氏の『大人のための言い換え力』は、NHK出版新書より、2017年12月に刊行された。易しい文章で書かれた日本語学的な本である。

構成に特徴があり、分類された10章を2章ずつセットにしている。たとえば、第1章と第2章は、言葉の難しさについての議論。第1章「知的に言い換える」と第2章「わかりやすく言い換える」はセットであるが、二つは対立する文章表現とも言えであろう。

そして各章では、具体的に方法を示す。第1章「知的に言い換える」では、漢語・外来語・雅語・二語の組み合わせ・名詞表現・接続詞・副詞などの項目を設けて、言葉の選び方や文章力について説く。

「知的に言い換える」とは、話し言葉を書き言葉に言い換えるということ。日常的な話し言葉は、稚拙になりがちなため、そのままでは文章には使いづらい。書き言葉らしい知的な表現に言い換えなければならない。しかし、知識に差があると、いくら知性のある文章を書いても、読み手にとっては理解できない難解な文章になってしまう。そこで、書き手には、読み手に合わせてわかりやすく言い換える表現力も要供される。「わかりやすく言い換える」とは、難しい言葉を易しい言葉に言い換えるということ。片方だけを追求することなく、両方を学ばなければならない。

このようにして、第3章以降も進行する。第3章「正確に言い換える」と第4章「やわらかく言い換える」は言葉の厳密さ、第5章「ダイレクトに言い換える」と第6章「イメージ豊かに言い換える」は言葉の含み、第7章「素直に言い換える」と第8章「穏やかに言い換える」は言葉の丁寧さ、第9章「シンプルに言い換える」と第10章「言葉を尽くして言い換える」は文章の長さ。

第3章と第4章は言葉の厳密さを扱う章であるが、研究者らは表現の正確さを追求する。同じくジャーナリストやビジネスパーソンにとっても、事実を誤りなく伝える正確さが必須。ただし、いつも正確に表現すればよいというわけではない。性や死に纏わることなどは、読み手に不快な印象を与えないように、ある程度ぼかすことが必要。たとえば、小説では性や死を扱うことが多く、やわらかく言い換える表現力が必要になるであろう。

第9章と第10章は言葉の長さを扱う章。無駄のないシンプルな文章と、情報不足がない詳しい文章という対局的な二つの表現を議論する。方向が反対のようではあるが、難しく考える必要はない。重要なのはTPO。どんなジャンルのどんな内容の文章かで、言い換え方が変わるというだけ。この事は、第1章から第10章までにおいて言える。それを理解した上で、表現の引き出しを増やしていけばよい。文章がうまいと言われる人は、表現の引き出しを使い分けている書き手。本書も、この立場で書かれている。文章では、内容を変えなくても、読み手や媒体や目的などに応じて、書き方を変えればよい。

私たちは日本語で文章を書くときに、思考段階から、自分の意見として主張をまとめ、その次に読みやすい伝わる日本語に言い換える。さらに今日では、翻訳しやすい日本語という概念がある。訳せる日本語という概念については、日本語の破壊を招くという批判もあるが、国際的に開かれた日本語にしていくという観点では、必要なのかもしれない。この件については、作家や評論家の間でも議論があるようだ。特定の言語に訳しやすい日本語への加工は、実際に必要になっているのであろう。これには、Google翻訳のような機械翻訳も含む。近代の日本において、欧米諸語を翻訳する際には、母国語である日本語のほうに変化を加えた。訳せる日本語という概念が生まれたように、今日では考慮しなければならないことが多いようだ。

大人のための言い換え力/石黒圭
出典:Amazon
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