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『形容詞を使わない 大人の文章表現力』石黒圭 ‐ 文章では形容詞を避けるべき!?【書評】

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この記事では、石黒圭氏の著書『形容詞を使わない 大人の文章表現力』について、そのテーマや概要をご紹介します。

形容詞を使わない 大人の文章表現 石黒圭・著

形容詞を使わない大人の文章表現力(日本実業出版社/石黒圭)
出典:Amazon

書誌情報

書名:形容詞を使わない 大人の文章表現
著者:石黒圭
出版社:日本実業出版社
発売年月:単行本 2017年11月/電子書籍 2017年11月
ページ数:単行本 237ページ
Cコード:C0081(日本語)

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文章では形容詞を避けるべき!? ―― 3類9種のレトリック

石黒圭氏の著書『形容詞を使わない 大人の文章表現力』は、日本実業出版社から2017年11月に刊行された。イラストを交えながら、易しい文章で書かれた日本語学的な本である。

文章では形容詞を避けるべきという意見を、聞いたことがないだろうか。本書のテーマはタイトルからも明白であるが、文章を書く上では形容詞を避けることが基本という立場から、形容詞に代えてどのような文章表現にすべきかが書かれている。なぜ形容詞を避けるべきかと、形容詞を言い換えるための具体的なレトリック(修辞技法)が、一冊にまとめられている。

形容詞は、共感や感情をストレートに示しやすく、アバウトな会話の中で使う分には便利かもしれない。反応として最初に出てきやすいが、自分の論理に閉じた言葉。詳しく伝えるには言葉としての力が不足していて適さない。

文章において、状況が目に浮かぶように説明しなければならないとき、主観性が強く感覚的な形容詞だけでは不十分であり、不向きと考えるべきであろう。論理的でなければ、筋の通った分かりやすい文章にはならない。文章でなくても、形容詞ばかりの会話では、稚拙に感じてしまうのではないだろうか。

文章に説得力を持たせるにはレトリックが必要になる。石黒氏の考えとしては、レトリックはあくまで表現の一手間であり表現の変化球。形容詞ばかりだと筋の通った分かりやすい文章にならないし、書き手の論理ばかりでも読み手が置き去りにされ、読みにくい文章になってしまう。そこで大切なのがレトリックであり、文章に一手間加えることがレトリックの本質。直感的な形容詞に一手間を加えることで、力のある表現に変化していく。

本書における形容詞は、狭義の「い形容詞」、および形容動詞の別称「な形容詞」。形容詞は種類の面では「い形容詞」と「な形容詞」に分かれ、意味の面では事物の性質を表す「属性形容詞」と人の気持ちを表す「感情形容詞」に分けられる。形容詞は、会話で共感を示すときには便利だが、文章で目に浮かぶように説明するのには不向きな品詞。

文章においては、形容詞を避けることが表現力向上の基本。大人が書く読み手のいる文章では、やはり形容詞はなるべく避けたほうがよい。もしも形容詞しか浮かばないなら、本書は打って付けの指南書になりそうだ。

形容詞には、概括性(大雑把な発想・直感的な表現)・主観性(自己中心的な発想)・直接性(ストレートな発想)という、文章表現では問題となりがちな発想が含まれている。これら三つの発想を排することで、分析的表現・客観的表現・間接的表現へと生まれ変わるはずだ。

そして、大雑把な発想を排するには「描写」「下位語」「オノマトペ」、自己中心的な発想を排するには「数値」「背景」「感化」、ストレートな発想を排するには「緩和」「反対」「比喩」のレトリックが役立つ。

具体的な内容には触れないが、これら3類9種の方法が本書において紹介されている。この表現技術を理解できれば、形容詞に頼らなくても、豊かな表現が身に付きそうだ。

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