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『赤い砂を蹴る』石原燃 ‐ 身近な社会問題を凝縮したような作品【書評】

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この記事では、石原燃さんの小説『赤い砂を蹴る』について、そのテーマや登場人物、物語の魅力をさまざまな角度から掘り下げていきます。

赤い砂を蹴る 石原燃・著

赤い砂を蹴る(文藝春秋/石原燃)
出典:Amazon

書誌情報

書名:赤い砂を蹴る
著者:石原燃
出版社:文藝春秋
発売年月:単行本 2020年7月/電子書籍 2020年7月
ページ数:単行本 158ページ

身近な社会問題を凝縮したような作品

石原燃さんの小説『赤い砂を蹴る』を読んだ。
本作は、第163回芥川賞候補となった。

初出は「文學界」2020年6月号。
7月に文藝春秋より単行本が刊行された。
それまで劇作家として活躍され、小説家としては本作『赤い砂を蹴る』がデビュー作。

石原燃さんは、1972年、東京都文京区生まれ。

本作が芥川賞候補作となったとき、石原燃さんの家系が話題となった。
祖父は文豪、太宰治氏(本名は津島修治)。
ペンネームの石原は、祖母の旧姓。

この物語は、主人公とその友人が、日系ブラジル人の農場へ向かう旅の途中から始まる。
主人公の名前は千夏で、友人の名前は芽衣子。
芽衣子はもともと千夏の母親と親しい関係だった。
千夏は出版社を退職し、フリーのライターとして働いている。

芽衣子は日系ブラジル人であり、千夏と二人で向かっているのは芽衣子の生まれ故郷。
芽衣子は、20歳のときに日本人と結婚し日本に移り住んだ。
芽衣子は60歳を過ぎて、ようやく日本に帰化する予定でいる。

赤い砂とは、千夏と芽衣子が二人で訪れた農場の、食堂の近くにある広場の砂のこと。
読み始めたときは紀行文のようにも感じた。
じっくりと読み進めると、深く考えさせられることが多い。
この物語では、現代に生きる登場人物の言葉を通して、さまざまな社会問題について言及している。

芽衣子が生まれたのは、終戦の十年後。
まだ混乱の続く日系ブラジル人のコミュニティで育った。
芽衣子は、第2次世界大戦下の日系ブラジル人の苦悩を直接知らない世代である。
千夏や芽衣子は、子どもの頃の体験や、親や祖父母の世代のことにも触れながら、親子関係や家族、あるいは社会問題に言及することが多い。
男尊女卑や日本の古い慣習、家父長制のようなことから、働くこと、介護、子育て、教育、子供の人権問題まで触れている。
戦後、日本が大きく変わったとはいえ、子どもの頃の慣習や親子関係などは急には変わらなかったはずだ。
現代社会においても、家族や社会の課題は山積み。
あるいは、日本には過去の悪い慣習がまだ残っているともとれる。
女性目線のためフェミニズム的な主張のように感じるセリフもある。

主人公やその友人たちは、親の介護や大切な家族の死を経験してゆく。
家族のあり方や社会問題が、この物語の大きなテーマになっているように感じた。

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