この記事では、大野晋さんの『日本語練習帳』を紹介します。
日本語練習帳 大野晋・著
書誌情報
書名:日本語練習帳
著者:大野晋
出版社:岩波書店(岩波新書)
発売年月:新書 1999年1月/電子書籍 1999年1月
ページ数:新書 222ページ
Cコード:C0281(日本語)
日本語の技能を自覚しながら上達できる
大野晋さんの『日本語練習帳』は、1999年1月に岩波書店より刊行された。本書には計250点の問題・課題が収められている。大野さんは「まえがき」において、文章読本や作文技術の本が大事に思うことを独りで語るものであるのに対して、「日本語の練習帳」という形を考えてみた、と述べられている。目次を繰ると、「Ⅰ 単語に敏感になろう」「Ⅱ 文法なんか嫌い ― 役に立つか」「Ⅲ 二つの心得」「Ⅳ 文章の骨格」「Ⅴ 敬語の基本」と章分けされていた。
練習1は、「思う」と「考える」の使い分け。問1が区別して実際に書くという問題で、問2がどう違うのかを説明する問題でした。単語の形と意味に敏感になるために用意された最初の問題です。似た意味の言葉ですが、場合によっては、どちらを使ってもいいというわけにはいきません。
言葉には意味の重なりがあります。重なるところはどちらを使ってもよいのですが、二つの言葉の重なりは大きい場合と小さい場合があります。「思う」と「考える」のように重なる部分が大きくても、重ならない小さな部分で、交換するわけにはいきません。この微妙な言葉のニュアンスに敏感であり、意識して使い分けているかで、その人が持つ言葉のセンスが分かるのです。
関連して練習2では、問3が「思いこむ」と「考えこむ」の違い、問4が「思い出す」と「考え出す」の違いを説明するという問題でした。
「思う」は、一つのイメージが心の中にできあがっていて変わらずあること。対して「考える」は、二つあるいは三つを比較して、あれこれと選択することです。この違いは昔からありました。本書では、さらに古く遡ることで、言葉の理解が確固たるものになるよう導いてくれます。
本書の問題を解くことで自分の日本語の技能がどのくらいか見当がつき、模範解答や解説を読むことで日本語の理解と表現に役立つでしょう。