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『ガリレオ 禁断の魔術』科学トリックと人生のドラマを両立【ドラマ評】

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この記事では、テレビドラマ『ガリレオ 禁断の魔術』について、そのテーマや登場人物、物語の魅力をさまざまな角度から掘り下げていきます。

ガリレオ 禁断の魔術

ガリレオ 禁断の魔術
出典:楽天

作品情報

出演:福山雅治, 新木優子, 澤部 佑(ハライチ), 村上虹郎, 森 七菜, 北村一輝 ほか
原作:東野圭吾
脚本:岡田道尚
演出:三橋利行(FILM)
制作著作:フジテレビ

Blu-ray/DVD ほか

科学トリックと人生のドラマを両立

テレビドラマ『ガリレオ 禁断の魔術』が、福山雅治さん主演のガリレオシリーズ、新作テレビスペシャルドラマとして、フジテレビの土曜プレミアムで放送された。本作での共演は新木優子さんや北村一輝さんら。北村さんが演じるのは、シリーズでお馴染みの刑事・草薙俊平。草薙の部下、牧村朋佳を新木さんが演じた。本作では、柴咲コウさんや吉高由里子さんが演じてきた、湯川の女性相棒役を新木さんが務めた。

福山雅治×新木優子×北村一輝

本作において、福山さん演じる湯川学は、教え子への期待と苦しみを味わう。草薙から事件に関する動画ファイルを見せられた時から、いつもと態度が違っていた。いつもの湯川を知らいない牧村は、捜査に協力的な湯川に好印象を抱く。しかし湯川が捜査上、重要なことを隠していることを知る。

湯川は、感情的になり、大学時代からの友人でもある草薙とぶつかる場面も。クライマックスでの湯川の行動は、刑事の草薙にとって看過できないものであった。

科学トリックに使われた大型銃器レールガンとは

レールガンは、実用化に向けて本格的な開発が進んでいて、防衛装備庁においても試作品が公開されている。画像を見ると、ドラマにおける最終段階の装置と似ていた。ドラマの中で、湯川が「レールガンは実験装置」といっていたが、この科学時術に関しても使い方は様々で平和利用も可能だが兵器にもなる。

原理的には、フレミングの左手の法則を利用しているという意味では、リニアモーターカーに似ている。ただし、リニアモーターカーが磁力の吸引・反発力で移動するのに対して、レールガンでは磁界方向と垂直に置かれた導体に電流を流して導体に力を働かせるローレンツ力を利用する。ローレンツ力によって、飛翔体が加速・発射されるのだ。

この装置は、宇宙の平和利用に欠かせないようで、宇宙機器とスペースデブリ(宇宙のゴミ)の衝突実験などに利用されている。軍事面では、ミサイル防衛や対艦攻撃などに活用し得る可能性を秘めているらしい。

ローレンツ力に関しては、身近な材料で簡単に実験できるようだ。作品の中で再現されたような大型銃器になると、強力な磁界と大電流が必要になる。とはいえ、本作の町工場のような環境と物理学の知識などがあれば、個人による製作が可能だとすれば物騒だとも感じた。

原作は東野圭吾さんの著書、文庫版オリジナルの『禁断の魔術』

フジテレビの土曜プレミアム『ガリレオ 禁断の魔術』の原作は、2015年に文春文庫として刊行された東野圭吾さんによるガリレオシリーズ第8弾『禁断の魔術』。

2012年刊行の単行本『禁断の魔術 ガリレオ8』(文藝春秋)は、4作の書き下ろし中短編小説を収録した連作集で、「透視す(みとおす)」「曲球る(まがる)」「念波る(おくる)」「猛射つ(うつ)」の4編を収録するガリレオ短編集第5弾であった。が、文庫化の際に、その内の一編「猛射つ」を長編に書き直したのが、文庫版オリジナルの『禁断の魔術』。枚数にして約250枚の中編「猛射つ」に200枚超を加筆して、長編として刊行された。

「透視す」「曲球る」「念波る」の3作については、その前に刊行された文庫版「虚像の道化師」に合わせて収録するということで、東野さんと出版社との話がまとまったらしい。単行本「虚像の道化師 ガリレオ7」は、「幻惑す(まどわす)」「心聴る(きこえる)」「偽装う」(よそおう)「演技る(えんじる)」の全4作を収録した、ガリレオ短編集第4弾であった。東野さんの相談に対して、担当編集者は少し驚いたが、最終的には快諾したとのこと。

このようにして、単行本『虚像の道化師 ガリレオ7』と『禁断の魔術 ガリレオ8』の二冊は、文庫版では大幅に再編集された。

東野圭吾さんのガリレオシリーズの魅力

東野さんのガリレオシリーズは、短編小説集『探偵ガリレオ』から始まった。草薙刑事が直面した不可解な謎を、物理学者湯川が科学的考察によって解明するというのが基本路線。東野さんは、これをガリレオシリーズの本筋と考え、短編の執筆では科学トリックを駆使しているとのこと。

対して長編小説では、色合いを変え、科学トリックは控えめにして、人間ドラマをじっくり描くことに傾注しているそうです。長編第一作『容疑者Xの献身』以降、登場人物が「小説の駒」ではなく「人間」として動き始め、謎を解くだけでは納得できなくなってきたと、東野さんご本人がおっしゃっている。『容疑者Xの献身』は、物理学とは殆ど無関係といってもよい。

「猛射つ」は、科学トリックが中心の物語。最終的に中編のままで連作集に収録され単行本として刊行された。しかし刊行後、この作品のことが頭から離れず、長編に書き直したいと出版社の担当者に伝えたところ、少し驚かれたが快諾してもらえた。長編化に着手し改稿作業を続けていくうちに、登場人物の生き様や心情がしっかりと形を成したとのこと。

このような形で原作ができ、本作には大掛かりな科学トリックと人間ドラマが描かれている。今回の科学トリックは、レールガン。これは、すでに実用化が進んでいる科学技術である。

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