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『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』東野圭吾 探偵役と助手が、叔父と姪の関係【書評】

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この記事では、東野圭吾さんの小説『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』について、そのテーマや登場人物、物語の魅力をさまざまな角度から掘り下げていきます。

ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 東野圭吾・著

ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人(東野圭吾, 光文社)の表紙
出典:Amazon

書誌情報

書名:ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人
著者:東野圭吾
出版社:光文社
発売年月:単行本 2020年11月/文庫本 2023年11月
ページ数:単行本 444ページ/文庫本 528ページ

紙書籍

探偵役と助手が、叔父と姪という関係の推理小説

東野圭吾さんの『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』は、2020年11月に光文社より刊行された。コロナ禍という時代背景が、作品に色濃く反映している。

殺人事件が起きたのは、寂れた観光地。定年退職した元中学教諭が自宅で殺された。被害者の神尾英一は、人望が厚く人に恨まれるような人間ではない。妻が亡くなっており、一人暮らしをしていたため、東京の市谷にある不動産会社で働いている娘の神尾真世のもとに連絡がいく。

真世は、警察の遺体安置所で父親の遺体と対面し、次の日に警察とともに殺人現場となった実家へ行く。すると、室内は荒らされていた。真世と警察が現場の状況を見ながら話をしていると、突然一人の男が現れる。

彼は神尾武史といい、英一の弟、つまり真世の叔父である。武史は、恵比寿でバーを経営しているが、マジシャンの経歴を持つ。かなりの腕前で、この特技を生かして事件の真相を暴くというのが、この推理小説の特徴。強引な性格で、手段を選ばずに、常識外れの大胆な行動も辞さない。

武史は手品が得意というだけでなく、人に対しても物事に対しても鋭い推理力を働かせる。警察に事件解決を任せっきりにせず、実兄を殺した人間を探す。その際、姪の真世も、父親を殺した犯人を捜すために、武史の助手として手伝う。

本作は客観三人称小説だが、主に真世の視点で書かれている。有名な推理小説に主人公が探偵と助手という設定の作品があるが、それに近いように感じた。あとは誰が犯人かというになるだろう。単なる物取りによる流しの犯行ではないなら、犯人の目的と動機は?

英一は、退職後も元教え子からの相談を受けることがあり、近々、同窓会の予定もあった。最近の連絡相手および自宅へ出入りしていた者の多くは、英一の元教え子であり、真世の中学時代の同級生もいる。犯人は彼らの中に……。

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