小説

『ほかならぬ人へ』白石一文 若い男女の恋愛感情と葛藤【書評】

この記事は約2分で読めます。

この記事では、白石一文さんの小説『ほかならぬ人へ』について、そのテーマや登場人物、物語の魅力をさまざまな角度から掘り下げていきます。

ほかならぬ人へ 白石一文・著

ほかならぬ人へ/白石一文
出典:Amazon

ほかならぬ人へ

著者:白石一文
出版社:祥伝社
発売年月:単行本 2009年10月/文庫本 2013年1月/電子書籍 2013年1月
ページ数:単行本 304ページ/文庫本 318ページ

若い男女の恋愛感情と葛藤

白石一文さんの中篇小説集『ほかならぬ人へ』は、祥伝社より2009年に単行本が刊行され、第142回直木賞を受賞した。本書は中編二作の作品集である。初出は、かつて祥伝社ムックとして刊行されていた小説誌『Feel Love』。
『Feel Love』は、20代女性を主な読者層とする読み切り恋愛小説誌であった。単行本には、表題作の「ほかならぬ人へ」と「かけがえのない人へ」の二作が所収されている。
表題作の「ほかならぬ人へ」は、若い男女の恋愛感情や葛藤などがリアルに描写されていた。

二作品とも、結婚適齢期の男女の、恋愛や葛藤などが、リアルな描写で描かれている。平易な言葉を使って、整った文体で書かれていた。柔らかな品のよい文章である。
三人称で書かれており、登場人物は、主人公の若い男女と、その家族や職場の人間ら。登場人物の中には、モラルに欠け不倫や浮気などを繰り返す人物もいる。

「ほかならぬ人へ」の主人公が男性で、「かけがえのない人へ」の主人公が女性。どちらの作品も、主人公が裕福な家庭で育っており、職場も一流企業。そして、恋愛対象の相手はあまり恵まれない家庭環境で育っている。
二作品とも同じような設定であるが、登場人物の人間性は大きく異なる。「ほかならぬ人へ」の主人公は、心の揺れはあっても、一途で寛容なところに好感を持てる。「かけがえのない人へ」の主人公は、育ちが良さそうで一流企業に勤めており、家族や職場では至ってまともに見えるが、性的嗜好がアブノーマルであることは別として、堅い話をしてしまうと結婚観や恋愛観、婚約者の誠意などは常識では理解しがたい。恋愛よりも、男女関係の道徳について指南しているようにも感じた。

ほかならぬ人へ/白石一文
出典:Amazon
タイトルとURLをコピーしました