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『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』社会性のある本格ミステリ【映画評】

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この記事では、映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』について、そのテーマや登場人物、物語の魅力をさまざまな角度から掘り下げていきます。

9人の翻訳家 囚われたベストセラー

9人の翻訳家
出典:Amazon

作品情報

監督:レジス・ロワンサル
脚本:レジス・ロワンサル, ダニエル・プレスリー, ロマン・コンパン
出演者:ランベール・ウィルソン, オルガ・キュリレンコ, リッカルド・スカマルチョ ほか
配給:ギャガ
劇場公開日:2020年1月24日

社会性のある本格ミステリ

映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』は、2020年1月に公開されたフランス・ベルギー合作の映画。監督はレジス・ロワンサルさんで、ダニエル・プレスリーさん、ロマン・コンパンさんとの共同で脚本も務めた。

本作は実話を題材にしている。それはミステリー小説「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズの、第4作目にあたる「インフェルノ」の出版の際に、アメリカの出版元が各国の翻訳者たちを地下室に隔離して翻訳作業を行ったという実話だ。

映画においての舞台はフランス。出版社社長のエリック・アングストローム(ランベール・ウィルソンさん)が、世界的ベストセラー「デダリュス」三部作の完結編「死にたくなかった男」の出版権を獲得した。彼はこの話題作の世界同時出版を計画する。

そして、9人の翻訳家が選ばれた。彼らは、携帯電話やパソコンなどの私物の通信機器を没収され、隔離された地下室で警備員に監視されながら翻訳作業を行う。パソコンも原稿も、地下室の外へは持ち出させない。翻訳作業を行う2カ月間は、外出もSNSも電話も禁止された。場合によっては、囚人や翻訳マシーンにでもされたような心持のする環境だ。それでも、お金のためだと割り切る者や、「デダリュス」の翻訳ができることを光栄に思っている者もいる。

そんな中で冒頭の10ページがネットに流出した。アングストロームのもとに脅迫メールが届く。原稿は厳重に管理され、建物のセキュリティも万全だ。アングストロームは、翻訳者の内部犯行と確信し自ら犯人探しに乗り出す。

アングストロームは、ビジネスマンとして大成功をおさめた男だが、不測の事態に陥り、多額の損失を恐れ、冷酷さを隠さない。犯人探しの方法は次第に狂気じみてゆき、暴力も辞さない構えだ。身の危険を感じた翻訳者のなかには、憶測で他の翻訳者を疑ったり怒りを露にしたりするものも出始めた。

本作は本格ミステリーとして制作された。途中で犯人の見当がついたとしても、その手口まで解明するのは難しい。そして、犯行の真の目的と理由が明かされてゆく。9人の翻訳者とアングストロームが対決する場面も見どころで、その後のことも描かれている。

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