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『十角館の殺人』綾辻行人 ‐ 熱烈なファンの多い本格ミステリ【書評】

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この記事では、綾辻行人さんの小説『十角館の殺人』について、そのテーマや登場人物、物語の魅力をさまざまな角度から掘り下げていきます。

十角館の殺人 綾辻行人・著

十角館の殺人(綾辻行人, 講談社文庫)の表紙
出典:Amazon

書誌情報

書名:十角館の殺人
著者:綾辻行人
出版社:講談社
発売年月:単行本 1987年9月(講談社ノベルス)/文庫本 1991年9月/文庫本新装改訂版 2007年10月/電子書籍 2007年10月
ページ数:文庫本新装改訂版 512ページ

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熱烈なファンの多い本格ミステリ

綾辻行人さんの小説『十角館の殺人』を読んだ。復讐劇が始まることを告げるプロローグ。冒頭を読み始めただけで、作者の筆力を感じ、本作への期待感が高まる。彼、つまり殺人を犯す人物は誰なのか。読者が推理することになる。いわゆる叙述トリックを用いたミステリ。

プロローグは、殺人を計画している彼が、透明な薄緑色の小さなガラス壜を、海へ投げ入れるシーンで、一旦閉じられる。壜の中の紙片には、殺人計画の内容がぎっしりと記されている。告白の手紙。最後の審判。人は神にはなれない。復讐といっても、犯罪であることに変わりない。彼は、良心の呵責に耐えられるのだろうか。プロローグのこのシーンは、エピローグの最後、つまり本作の最後につながる。

そして第1章は、推理小説研究会の学生の台詞を通して、本格ミステリを書くことを宣言するかのように始まる。社会派ミステリでもなく、本格ミステリ。
本格ミステリ好きのための小説『十角館の殺人』は、多くの読者やミステリ作家らの心を揺さぶり、綾辻行人さんは敬愛されてきた。『十角館の殺人』の初刊発行は1987年。今更だが、本格ミステリの魅力を味わいたいなら、本作はお薦めの一冊。現代社会に探偵のような人物が登場し、大トリックのあるミステリ。

『十角館の殺人』は、綾辻行人さんのデビュー作。刊行予定が固まったあとにシリーズ化を思いついたとのこと。第4作で完結するつもりが、ある時点で続行を決め、完結予定を全10作までに改めたと述べている。館シリーズは長編作品であり、第7作の『暗黒館の殺人』は、新書が上下二分冊、文庫化のさいは四分冊に。
刊行の順番は『十角館の殺人』『水車館の殺人』『迷路館の殺人』『人形館の殺人』『時計館の殺人』『黒猫館の殺人』『暗黒館の殺人』『びっくり館の殺人』『奇面館の殺人』。つまり2021年2月現在、残すところあと一作。第9作『奇面館の殺人』が講談社ノベルスから刊行されたのが2012年1月。少し間隔が空いていますね。
なお講談社ノベルスは、主に推理小説を扱い、軽装の新書判で発行する講談社の小説レーベル。
『十角館の殺人』に関しては、講談社ノベルスと講談社文庫のほか、2017年に講談社から「限定愛蔵版」が、外箱・付録付きのハードカバーで発売されている。「限定愛蔵版」の付録冊子「SPECIAL BOOKLET」には、綾辻行人さんが書いた「三十年目の想い  —— あとがきに代えて —— 」及び、著名作家らの「私の『十角館』 —— 33名によるエッセイ —— 」が収録されている。

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