この記事では、東野圭吾さんの小説『沈黙のパレード』について、そのテーマや登場人物、物語の魅力をさまざまな角度から掘り下げていきます。
沈黙のパレード 東野圭吾・著
書誌情報
書名:沈黙のパレード
著者:東野圭吾
出版社:文藝春秋
発売年月:単行本 2018年10月/文庫本 2021年9月
ページ数:単行本 448ページ/文庫本 496ページ
ジャンル:エンタメ・ミステリ
共犯者の誰も知らなかった隠れた真実
東野圭吾さんの著書『沈黙のパレード』は、2018年10月に文藝春秋より刊行された推理小説。本作は、2018年度の週刊文春ミステリーベスト10の国内部門で1位となった。
ミステリー小説において、遺族らの視点に立つ復讐のための殺人というストーリーは受け入れにくいこともある。だが本作は、そういう経緯があったのかと、事件の真相や話の展開に関心を持ち続けながら読了できた。
殺意の有無、予期せぬ事態、不運な出来事。自分の身に何が起こるのかは分からない。
ガリレオシリーズではお馴染みの理系色の強い難解トリックの謎が解けても、周到なアリバイ工作が施されている。天才物理学者・湯川学が推理し、容疑者の自供が始まるまでは、謎解きを試みても難しいであろう。
何故この男は無罪になってしまうのだろう。警察や司法への失望と憤り。常軌を逸する被疑者・蓮沼。卑劣で凶悪な人物。遺族らは、司法が裁けないなら、自分たちがこの手で裁きたいと願う。復讐のためには、殺人さえもいとわないという、遺族および被害者を愛した人々の思い。だが殺人を犯せば、自分たちが犯罪者となる。残された家族のことも忘れてはならない。
二つの事件で被疑者となった蓮沼。真相を知りたい。この男が犯人であると確証を得たとき、遺族らは真実を吐かせるための計画を立てる。警察にはできない方法を使って。殺したっていいのだ。完全犯罪の計画。計画の実行はパレードの当日。
警視庁捜査一課の内海薫は、今回の事件に関して、同情の余地はあるが、どんなに最低の人間であっても命を奪う権利は誰にもない、と改めて思う。しかし、そのことを実証しなければならないことを考えると、気が重くなる。
事件解決の様相だが、まだ残りのページ数は多い。このまま終わりそうもない。どんでん返しが待っている予感。二転三転する真相。隠された真実。居た堪れない思いで、胸が裂ける。東野圭吾さんのミステリー小説の世界に浸ることができた。