小説

『アンソーシャル ディスタンス』金原ひとみ ‐ 2、30代の男女の閉塞感や恋愛【書評】

金原ひとみさんの『アンソーシャル ディスタンス』には、5編の短編小説が収められています。いずれの作品も初出は「新潮」。本書は第57回谷崎潤一郎賞受賞作。テーマは恋愛と性と命について。あるいは閉塞感や死生観といったもの。内容は少し過激。
小説

『たかが殺人じゃないか』辻真先 ‐ 二つの不可解な事件の解明と動機【書評】

辻真先さんの『たかが殺人じゃないか』では、密室殺人と解体殺人が起きる。冒頭から結末までにわたる伏線の張り方にユーモアがあり面白い。物語の3分の2あたりまでにトリックを解明し犯人の目星をつけ、残りの3分の1で動機を推測するという構成であった。
小説

『夢幻花』東野圭吾 ‐ 新しい科学情報や時代背景を取り入れての刊行【書評】

東野圭吾さんの『夢幻花』は、PHP研究所から2013年に刊行された。初出は月刊誌『歴史街道』で、2002年7月号から2004年6月号までの連載。新しい科学情報や時代背景を取り入れるために、全面的に書き直したうえでの単行本刊行であった。
小説

『流浪の月』凪良ゆう ‐ 世間からは理解してもらえない二人の関係性【書評】

凪良ゆうさんの『流浪の月』は、東京創元社より2019年8月に刊行された。2020年本屋大賞受賞作。主人公は更紗と文のふたり。ふたりの関係性が、本作のテーマになっている。世間からは理解されないふたりの出会いと15年後の再会。だがふたりは絆を確かめ合う。
小説

『珠玉の短編』山田詠美 ‐ ユーモラスで深みのある11編【書評】

山田詠美さんの短編集『珠玉の短編』は2016年に講談社より刊行された。全11編を収録。性愛についての話が多い。それから苛めについて。変化に富んだ文体、ユーモラスな語り口などが印象的。川端康成文学賞の「生鮮てるてる坊主」は、少しシリアスに展開。
評論・随筆・その他

『選べなかった命』河合香織 ‐ 母体保護法の矛盾、優生思想、医療の疲弊【書評】

河合香織さんの『選べなかった命: 出生前診断の誤診で生まれた子』は、2018年7月に文藝春秋から刊行されたノンフィクション作品。本書は、2019年度の第50回大宅壮一ノンフィクション賞と第18回新潮ドキュメント賞をW受賞した。
小説

『希望の糸』東野圭吾 ‐ 悲しくぞっとする殺人事件の経緯【書評】

東野圭吾さんの小説『希望の糸』は、2019年7月に講談社から刊行された書き下ろし長編で、「家族」をテーマにした物語。本作は、加賀恭一郎シリーズに登場する松宮脩平刑事が主人公のスピンオフ作品である。松宮刑事は、加賀恭一郎の従弟。
本・辞書

『書くための文章読本』瀬戸賢一 ‐ 日本語の文末問題とレトリック【書評】

『書くための文章読本』の著者は、レトリックや英語学を専門とする言語学者・瀬戸賢一さん。レトリックは文学における大きなテーマのひとつ。日本語の文末問題をメインテーマとし、レトリックの周辺を長年研究してきた立場から書かれている。
小説

『クスノキの番人』東野圭吾 ‐ 不運を嘆いていた青年の成長【書評】

東野圭吾さんの小説『クスノキの番人』は、不運を嘆いていた青年が、突然現れた伯母に導かれ、与えられた仕事を通して成長ゆく物語。願い事をすれば叶うという御神木のクスノキ。ファンタジー的な要素が強い作品である。
評論・随筆・その他

『文章読本』丸谷才一 ‐ 複雑になった現実への対応【書評】

丸谷才一氏の『文章読本』は、1977年に中央公論社から刊行された。現実はいっそう複雑になったが、我々は過去から学び取る際に、自分自身を経過させ、文明全体、社会全体の力も借り、新しい文章の型を自分の力で作るしかない。
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