春のはじまりから終わりへ。移ろう季節のなかで、ふと立ち止まるように詠んだ十九句をまとめました。言葉と沈黙のあいだに生まれる、ささやかな感触をお楽しみいただければ幸いです。
金縷梅や脚立の影のまだ長く

瓶にさす桃の花まだ蕾かな

瓶にさす桃の花や座の明るさ

山茱萸の花に寄れば原始めく

春昼や校正終へてゼリー喰う
春の夕書き終へて指止まりけり
書き終へて音なき部屋の春の夕
見比べて庭に四本の椿かな

歌とは違ふ
白き花水木かな

客迎ふ芝桜やや控えめに

門脇に芝桜ひかへめに咲く
雨脚にまぎれてゐたり一人静

一人静雨の深みに触れてをり
庭にありてなお探しゆく錨草

春灯や本閉ぢかけて指の跡
春灯や椅子に戻れば卓広し
石楠花や咲きそむる庭に吹く風

石楠花や庭に満ちゆく光かな

白きくす玉
石楠花の盛りかな


