春のはじまりから終わりへ。移ろう季節のなかで、ふと立ち止まるように詠んだ十三句をまとめました。言葉と沈黙のあいだに生まれる、ささやかな感触をお楽しみいただければ幸いです。
石楠花や咲きそむる庭に吹く風

石楠花や庭に満ちゆく光かな

客迎ふ芝桜やや控えめに

門脇に芝桜ひかへめに咲く
歌とは違ふ
白き花水木かな

見比べて庭に四本の椿かな

春の夕書き終へて指止まりけり
書き終へて音なき部屋の春の夕
春昼や校正終へてゼリー喰う
山茱萸の花に寄れば原始めく

瓶にさす桃の花まだ蕾かな

瓶にさす桃の花や座の明るさ

金縷梅や脚立の影のまだ長く


