小説

『東京奇譚集』村上春樹:大切な何かを失うことへの切ない思い

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村上春樹さんの短編集『東京奇譚集』には、文芸雑誌『新潮』2005年3月号から6月号に掲載された「偶然の旅人」「ハナレイ・ベイ」「どこであれそれが見つかりそうな場所で」「日々移動する腎臓のかたちをした石」の4編および、書き下ろし短編「品川猿」の、計5作品が収録されています。作品タイトルの奇譚という言葉が示し、また「偶然の旅人」の語り手の言葉や「品川猿」の登場人物の台詞のなかにもありますが、いずれも不可思議な話です。

空想的であったり現実離れしていたりする話を文芸作品として書くことは、読者に受け入れられるギリギリのところで話をまとめる筆力が必要であり、凡人には難しい芸当かもしれません。

そして、村上春樹さんが短期間に書き上げた5作品には、一貫したテーマがあり、それは大切な何かを奪われたり失ったりすることの切なさ。家族であったり健康な体であったり、死別であったり失踪であったり、突然の別れであったり、場合によっては名前の忘却。

東京奇譚集(新潮文庫)/村上春樹
出典:Amazon
作品情報

書名:東京奇譚集
著者:村上春樹
刊行:新潮文庫
発売:2007年12月
電子書籍配信:2020年12月
※この作品は2005年9月に新潮社から単行本として刊行

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